抄録
本研究は,世界選手権およびオリンピックで男子4 × 400 m リレーの日本代表に選出された佐藤拳太郎選手を対象に,大学入学時から2021 年に開催された東京オリンピック出場までに行ってきたトレーニングと記録の変遷をまとめ,次世代の選手および指導者がトレーニングを計画するための基礎資料を提示することを目的とした.佐藤選手は,高校時から400 m 走を専門とする選手であり,レース全体にわたって走速度を維持するタイプであった.大学入学後は,前半から積極的に走速度を獲得するとともに,後半まで走速度を維持できる取り組みを中心に実施し,2015 年度に45.58 秒を記録した.それ以降,日本代表として世界選手権に出場するようになり,より前半から積極的な走速度の獲得がみられるようになった.しかしながら,後半に大きな失速がみられ,低調な記録が続いた.そのようなことから,2021 年度に400 m 走の前半で高い走速度を獲得・維持しつつも休息のイメージを持つレース展開に変容することで,記録更新の兆しがみられ,東京五輪出場を果たすことができた.そこで本研究では,2021 年度までの取り組みと記録との関連をまとめることで,今後の記録更新の糸口を探ることとした