2018 年 52 巻 4 号 p. 269-274
オーツ麦(Avena stativa L.)は,昔から食用の穀物としてだけでなく,その水分散体がさまざまな乾燥性の皮膚疾患に伴う痒みや刺激性を和らげるものとして使われてきた。本来,オーツ麦には天然のフィトケミカルが豊富に存在し,フェノール性化合物やフラボノイドには抗酸化作用や抗炎症効果が,多糖類成分には保湿効果が期待できる。オーツ麦から製造した微粉砕粉は,コロイダルオートミール(COM)と呼ばれ,化粧品原料として使われている。本研究では,脱殻後,微粉砕前に湿熱処理の1つであるエクストルーダー処理を行い製造したコロイダルオートミール(ExtCOM)と従来のCOMの性質について比較検証した。その結果,ExtCOMは粒度分布プロファイルがCOMとまったく異なり,β-グルカンの溶出量や抗酸化能が従来のCOMに比べて非常に高いことがわかった。さらに,比表面積と抗酸化能の関係性という観点でデータを分析し,エクストルーダー処理による穀物細胞構造の物理化学的変化がフィトケミカルの生物学的利用能の向上に大きく寄与している可能性があると結論づけた。