抄録
近年、脳科学の知見に基づく理論モデルの工学的応用が注目されており、ロボット工学への貢献が期待されている。現実的に人と共存するロボットの開発は、刻々変化する環境においても認知判断できる高次脳機能を兼ね備えることが要求される。一方、生体機構を回路化して組み合わせる方法論で、精密性と安定な制御可能性を中心課題としてきた従来の工学的規範を超える枠組みが提示できるかは大きな疑問として残っている。また、生物の持つ「自律性」が工学的に再構成できるのかについても期待感の一方、疑問視されている。本研究では「生命体から学ぶ」という機械論から、「生命のダイナミクスから機械に生命を吹き込む科学」へ展開する可能性を、脳型ロボット研究・開発の向かうべき方向性として検討したい。