日本顎口腔機能学会雑誌
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原著論文
咀嚼運動機能の生後発達に対する長期の粉末飼料飼育の影響
森田 匠藤原 琢也高須 寛貴齋藤 恵介後藤 滋巳平場 勝成
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2011 年 18 巻 1 号 p. 26-42

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抄録
咀嚼運動機能の生後発達において,発育時期に応じて適切な食品を咀嚼することによる運動学習の側面があると推測される.そこで本研究では,ウサギを用いて離乳後(6週齢)から成獣(33週齢)に至るまでの生後発達の過程で,固形飼料で長期間飼育した群と粉末飼料で長期間飼育した群の2群を用いて.咀嚼器官の特に咀嚼運動機能面に及ぼす影響を検討した.各群においては,離乳後から与えてきた本来の飼料を摂取している時の下顎運動や咀嚼筋筋電図を記録することに加えて,固形飼料飼育群にはこれまで咀嚼経験のない粉末飼料を,粉末飼料飼育群には固形飼料を実験終了時に短期間咀嚼させて,下顎運動パターンや咀嚼筋筋電図を比較検討した.その結果,粉末飼料飼育群のウサギは固形飼料を全く躊躇することなく咀嚼し,その時の下顎運動はグラインド運動が主体であった.さらに,咀嚼回数が増加する,あるいは咬合相の持続時間が延長するなどの咬合力の負荷補償機序の発達不良を示唆する所見は,粉末飼料飼育群では認められなかった.以上のことから,固形飼料を咀嚼するのに適しているグラインドタイプを選択し,且つ実行する基本的な咀嚼機能は,長期の粉末飼料飼育によっても大きく阻害されないことが判明した.しかしながら,両群の咀嚼機能は全く同一ではなく,以下に示す機能的相違点も存在した.1)粉末飼料飼育群では,開口相の持続時間が固形飼料飼育群に比して短かった.2)固形飼料飼育群ではみられない咬筋の開口相での活動が粉末飼料飼育群では存在し,この咬筋活動に対応して両群では下顎運動軌跡が一部分異なっていた.
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© 2011 日本顎口腔機能学会
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