顎筋群や舌筋,さらには表情筋の収縮力を力源とする力は,咀嚼,嚥下,呼吸等,顎口腔系の諸機能を遂行するための運動エネルギーとして用いられる.また,これらの力は歯列上咬合力あるいは顎関節荷重として発現し,それぞれの組織内部にメカニカルストレスを惹起し,炎症や骨リモデリングなど,そのストレスに応じたメカノバイオロジカルな反応を引き起こす.この「力と生体反応」は,補綴歯科治療の成否や顎機能障害の発症に大きく関与する.すなわち,補綴歯科治療の良好なアウトカムを得るためには,生体に加わる力を適切に制御することが必要であり,そのためには実際に機能時に口腔内で発現する力を知ることが重要となる.私どもはこれまで,小型の圧電センサを歯冠補綴装置内に組み込むことで,歯やインプラントに加わる三次元荷重を口腔内にて実測可能なシステムを構築し,さまざまな条件下にて荷重測定を実施してきた.しかし,口腔内にて正確に荷重測定を行うことは容易ではなく,実測に至るまでには多くの障壁が存在した.そこで本総説では,筆者らが荷重測定手法を構築するに至るまでの道のりを紹介し,口腔内荷重測定実験において勘案すべき要点について考察する.