2012 年 44 巻 SUPPL.1 号 p. S1_21-S1_28
離散ウェーブレット変換(DWT) は,Daubechiesの第1世代のDWTに始まり,Sweldensによるリフティング理論による第2世代のDWTを経て,現在,戸田,章の考案した時間周波数密度を可変可能にする完全シフト不変・複素数離散ウェーブレット(第3世代) と進化している.従来のDWTの致命的な欠陥に,シフト不変性の欠如がある.われわれは,この問題を解決した完全シフト不変性(PTI) を基礎に,時間周波数密度を可変可能にする新しい離散ウェーブレット(VD-PTI) を提案している.心臓のリズムの特性である心拍変動は,シフトそのものと考えられるので,心電図・心磁図にVD-PTIの応用を試みた.独立成分分析(ICA) により抽出した胎児心磁図,胎児心電図のノイズ除去にPTIを応用した例,Brugada症候群の心電図や心筋梗塞後VTがみられた症例や,催不整脈性右室形成不全の加算平均心電図の心室遅延電位をVD-PTIで解析したパイロット・スタディーから,不整脈などの心電図の解析にVD-PTIは有望であると考えられる.