心臓
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症例 左房原発線維肉腫の1例
伊藤 英章真田 宏人中尾 武大里 和雄名村 正伸渡辺 彰金谷 法忍大家 他喜雄遠藤 将光関 雅博林 守源
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1989 年 21 巻 6 号 p. 724-729

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抄録
症例は17歳男性.血疾,労作時呼吸困難を主訴に昭和62年U月18日入院.心尖部に最強点を有するLevine2/VIの低調性拡張中期雑音を聴取した.胸部X線上,心胸比52%の心拡大と肺動脈主幹部腫大を認め,断層心エコー上,僧帽弁前尖の一部と弁の付着部に輝度の増強,肥大を認め,左房後壁より左房内へ突出する40×30mmの塊状エコーが観察された.塊状エコーは拡張期に僧帽弁口へ陥入.冠動脈造影像にて左冠動脈回旋枝および右冠動脈より房室枝を介し,腫瘍への栄養撫管と腫瘍濃染像を認めた.11月19日緊急腫瘍摘出術を施行.腫瘍はほぼ球形,黄色半透明,弾性硬で僧帽弁口を占拠しており,僧帽弁前尖,後尖,弁輪部から左房後壁にかけて乳頭様,弾性軟の腫瘍が付着していた.腫瘍は組織学的に線維肉腫であった.本症はまれで原発性心臓腫瘍の3.3%を占め,3年以上生存した報告例はない.近年,原発性心臓肉腫に対する術後化学療法により,延命効果のあった症例の報告が散見されるが,今後,本症例の残存腫瘍に対する強力な化学療法が重要であると思われた.
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