抄録
心不全あるいは心肥大に伴って心電図異常や不整脈を来すことが,今日「電気的リモデリング」という統一した概念で説明されるようになりつつある.特に病態心で見られるイオンチャネルリモデリング,不整脈は「acquired channelopathy」という概念でとらえられ,近年進歩した分子生物学的手法と過去に長い歴史をもつ電気生理学的手法の統合によりその理解が深まったと言えよう.一方でこのような微細な視点は,この現象に数多くの分子が同時に関わっていることを明らかにし,その解釈を困難としている. このような困難は, 「個体」と「細胞」,「適応」と「破綻」という概念を用いて一元的に理解することにより克服可能であるが,その全容を理解するためには分子網羅的な研究とin siilico simulationの発展が必要である.