理科教育学研究
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原著論文
教育実習生の理科授業観に関する研究 : 教育実習期間における授業イメージの変化
山崎 敬人
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2004 年 44 巻 2 号 p. 71-81

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抄録

本研究の目的は,教育実習の開始時と終了時における教育実習生の理科授業観の様態とその変化を明らかにするとともに,実習中の経験やエピソードとそうした変化との関係について考察することであった。実習生が回答した理科授業に関する比喩と,終了時の比喩を考える契機となった実習中の経験やエピソードの回答を分析した結果,主に以下の点が明らかになった。・開始時の回答では,理科授業のねらいや役割に焦点を当てた比喩が大部分を占めていた。しかし,終了時ではそうした回答が減少し,理科授業の構想や実践に関する比喩が増加した。・教育実習期間において比喩のカテゴリーが変化した実習生では多くの者が終了時に「理科授業の構想」と「理科授業の実践」に関するカテゴリーの比喩を回答していた。これらの比喩には,理科授業の構想における教師の教材理解や教材解釈の重要性,教師と生徒の協同による理科授業,多様な授業の実践や展開の可能性といった視点が認められた。・教育実習中の主な経験・エピソードの回答は, 「授業方法」「生徒の実態」「教師の教材理解」の3つのカテゴリーに分類されるものであった。・開始時と終了時ともに「理科授業のねらい・役割」のカテゴリーの比喩を回答していた者では,「生徒の実態」や「授業方法」に関する教育実習中の経験・エピソードが,彼らが実習の開始時に保持していた理科授業に関する考えを再確認することに寄与していたと考えられた。一方,「教師と生徒の関係」と「授業の多様性」に関する経験・エピソードを回答していた実習生についてみると,そうした経験やエピソードが彼らの理科授業観の問い直しや変容につながる重要な契機の一つとなっていたのではないかと考えられた。

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© 2004 日本理科教育学会
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