理科教育学研究
Online ISSN : 2187-509X
Print ISSN : 1345-2614
ISSN-L : 1345-2614
原著論文
戦後日本の検定教科書『よいこのかがく』における戦前の『自然の観察』及び戦後の代用教科書『理科の友』の影響
柴 一実
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 53 巻 3 号 p. 451-461

詳細
抄録

本研究の目的は,戦後日本の検定理科教科書『よいこのかがく』(1949・50)を戦前の『自然の観察』(1941・42)と戦後の代用教科書『理科の友』(1948)の単元内容と比較検討することによって,『よいこのかがく』が『自然の観察』や代用教科書『理科の友』の影響を受けて,どのように作成されたのかを解明することであった。関係する文献資料を分析した結果,次の諸点が明らかになった。(1)1949・50年に発行された第1〜3学年用検定教科書『よいこのかがく』において,40%以上の内容が代用教科書『理科の友』の内容を引き継いでいたが,20%程度の内容は1949年2月に告示された教科書検定基準である「理解の目標」等を参考にしながら,新しく導入されていた。(2)『よいこのかがく』の単元「しゃぼんだま」は戦前の『自然の観察』や戦後の『理科の友』においても取り上げられており,いずれもシャボン玉に対する児童の興味関心を喚起することに主眼を置いていた。(3)『よいこのかがく』におけるシーソー教材は『自然の観察』には見られないものであり,『理科の友』の内容を引き継いでいた。同教材は,B.M.パーカー著『基礎科学教育叢書・機械』(1944)を参考にしながら,新しく取り入れられたのではないかと考えられる。(4)『よいこのかがく』における自由研究は『自然の観察』と比較すると,選択されるテーマ内容が変化しているだけでなく,研究発表会の進め方も児童主体に変わっていた。

著者関連情報
© 2013 日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top