2013 年 53 巻 3 号 p. 523-534
本研究では,近年の理科教育における重要課題の一つである,子どもの自律的な思考・表現の向上を志向した具体的な教授論的視点の導出を図ることを目的とした。その際,自律的な学習を成立させる源泉となる要素としてメタ認知に着眼し,学習におけるその情報処理過程の内実を精査した。具体的にはNelson, T.O.らのメタ認知理論を援用し,これと表象機能との関連性を見極めることによって,メタ認知に関わる情報構成要素の質的変容が科学概念構築に及ぼす影響を検討した。加えて,協同行為を基調とした子どものメタ認知の内実の相対化,これによるメタ認知と表象機能の相互結合を志向した教授論的視点の構想を試みた。結果として,自己の学習が適確にモニタリングされ,それを具体的に表象することによって,課題解決に繋がる具体的な方略の選択を可能とすることが明らかとなった。この際,子どものこうしたモニタリングとコントロールの内実を外化させ,他者のモニタリングとコントロール過程との相互作用を活性化させることによって,子どもの自律的な思考・表現の質的向上が図られ,メタ認知と表象機能の活性化を基盤とした科学概念構築が具現化された。