理科教育学研究
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資料論文
生徒の化学変化についての理解を促すための指導法の考案―中学校2年「物質の分解と原子・分子」の内容において―
小倉 恭彦藤井 浩樹
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2013 年 54 巻 1 号 p. 105-115

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抄録

中学校2年「物質の分解と原子・分子」の内容において,生徒が化学変化を微視的に理解することをねらいに,粒子のモデルをもとにした学習活動を試みた。その活動は,モデルを用いた現象の予想,実験による予想の検証,及びモデルの正誤の確認から構成され,この構成によって巨視的レベル(事物・現象)と微視的レベル(粒子のモデル)の相互の関連付けを図るものであった。そして,生徒の理解の実態を捉えるために,試行前後に質問紙によるアンケート調査を行った。その結果,以下のことがわかった。
①粒子のモデルをもとにした学習活動は,従来の粒子のモデルを創り出す学習活動に比べて,化学変化についての微視的な理解を導きやすいものであった。
②しかし,化学変化についての微視的な理解を導き得ない場合もあった。その理由を分析したところ,既習の化学変化については,ある物質が性質の異なる別の物質に変化するという,化学変化についての巨視的な理解がそもそも欠けている生徒や,物質を構成する原子の種類や数についての理解が不足している生徒が比較的多かった。また,未習の化学変化については,反応前後で原子の種類や数を合わすことができない生徒がいた。そして,それらを合わすことはできても,このことと反応後に生成しそうな物質を想定することを結び付けるという,微視的操作が難しいと考えられる生徒が比較的多かった。

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© 2013 日本理科教育学会
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