理科教育学研究
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原著論文
「動物の体のつくりと働き」に関する総合的な理解に影響を及ぼす諸要因の因果モデル―直接経験的及び間接経験的な観察・実験を起点として―
古澤 陽介松原 静郎岩間 淳子稲田 結美谷 友和小林 辰至
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2013 年 54 巻 1 号 p. 71-81

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抄録

生物の体のしくみを学習する上で,直接的及び間接的な観察・実験の経験や,生き物への好感度や興味・関心等が理解に影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,大学生・大学院生を対象に「動物の体のつくりと働き」の総合的な理解に影響を及ぼす要因間の因果関係に着目し,その因果構造の解明を目的とした。
第一に,質問紙による実態調査及び質問項目の因子分析を行い,総合的な理解に影響を及ぼす6つの要因として「生物の体に関する興味・関心」,「生き物への好感度」,「生き物との触れ合い」,「直接経験的観察・実験」,「間接経験的観察・実験」,「人体に関する基礎知識」を抽出した。次に,総合的な理解を「多面的な見方」と「因果への意識」の2つの観点で評価し,回答を点数化した。そして,これら8つの変数について,パス図を作成し,パス解析を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。
(1)「直接経験的観察・実験」と「間接経験的観察・実験」は共に「生物の体に関する興味・関心」に直接的影響を及ぼしていた。また,「直接経験的観察・実験」は「多面的な見方」と「人体に関する基礎知識」に直接的影響を及ぼし,「間接経験的観察・実験」は「生物への好感度」,「人体に関する基礎知識」を経由して,「多面的な見方」に間接的影響を及ぼしていた。
(2)「生物の体に関する興味・関心」は「生き物への好感度」と「生き物との触れ合い」に直接的影響を及ぼし,「生き物への好感度」は「生き物との触れ合い」に直接的影響を及ぼしていた。一方で,「生き物との触れ合い」が本研究で抽出した他の要因に及ぼす影響は認められなかった。

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© 2013 日本理科教育学会
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