本研究では, リパーゼによりオリーブ油から分解生成するグリセリン量を自作の屈折計を用いて簡便に測定できる教材の開発に取り組んだ。屈折計は3 枚のスライドガラスをプリズム状に接着した構造であり, プリズムの中に溶液を入れ, 横からレーザー光を当てる。溶液を透過しスクリーン上に到達したレーザー光は, 溶液濃度に比例してその位置を移動する。リパーゼには位置特異性をもたない微生物由来のCandida rugosa リパーゼ(CRL)を用いた。反応開始から3 時間後のグリセリン量を屈折計により測定したところ, 中和滴定より求めた脂肪酸の約3 分の1 の値を示し, 酵素法から得られたグリセリン量との比較においてもその差は7%程度に収まった。
本研究の応用実践として, リパーゼの位置特性を調べる実験を高等学校理科部での活動としておこなった。CRL とは異なり, トリグリセリドの2 位に作用しない豚膵臓リパーゼではグリセリンの顕著な増加は認められない結果が得られ, 生徒を対象とした装置の活用も可能であることが示された。