理科教育学研究
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原著論文
児童におけるアーギュメント自己評価能力とアーギュメント構成能力の関係性についての予備的検討:
主張-証拠-理由付けを含むアーギュメントを導入した小学校第3学年の単元「物と重さ」の事例
田中 達也神山 真一山本 智一山口 悦司
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2021 年 62 巻 1 号 p. 119-131

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抄録

本研究の目的は,児童におけるアーギュメント自己評価能力とアーギュメント構成能力には関係があるのか,また,関係があるとすればどのような関係があるのかを予備的に検討することであった。本研究では,まず,両者の関係の有無を検討するため,主張-証拠-理由付けを含むアーギュメントを導入した小学校第3学年の単元「物と重さ」を実施する中で,児童計65名を対象に,アーギュメントを記述させる課題による調査と,児童に自身のアーギュメントを自己評価させる課題による調査を実施した。2つの調査結果から,次の2点が示唆された。(1)アーギュメント自己評価能力が高い児童は,アーギュメント構成能力が高い傾向にある,(2)アーギュメント自己評価能力が低い児童は,アーギュメント構成能力が低い傾向にある。次に,アーギュメント自己評価能力のアーギュメント構成能力への影響を検討するため,アーギュメント構成能力の向上の仕方が異なる児童計16名を対象に,アーギュメントの自己評価の詳細をたずねる面接調査を実施した。この調査の結果から,次の2点が示唆された。(1)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができる児童は,アーギュメント構成能力が向上していた傾向にある,(2)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができない児童は,アーギュメント構成能力が向上していない傾向にある。

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© 2021 日本理科教育学会
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