理科教育学研究
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総説論文
理科が関わる学習の転移に関する諸外国を中心とした研究動向
堀田 晃毅松浦 拓也
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2021 年 62 巻 1 号 p. 23-35

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抄録

学習の転移とは,学習者の習得した知識や技能,解決方法を異なる場面に活かすことである。学習の転移に関する研究は過去1世紀に渡り行われているものの,理科教育の観点から学習の転移に関する研究を国内で行っているものは少ないという現状がある。本研究では,理科が関わる学習の転移に関する研究が多く報告されている諸外国の文献をレビューすることで,学習の転移に関する研究動向を把握し,今後の転移研究において留意すべき点を検討した。論文検索プラットフォームWeb of Scienceを利用して論文を収集,分析した結果,理論的検討,実態調査,授業実践という3つのタイプに分類することができるとともに,これらの研究を通して学習の転移が促進される条件や転移を促進させるための指導法が検討されていることが明らかとなった。一方,学習の転移に関する研究は,個々の研究によって想定している転移の文脈が異なることも示された。このため,実践研究において指導法の有効性を検討する場合,どのような文脈に転移することを想定するのかについて論考し,論文中にも明記しておく必要がある。また,転移の実態調査研究においては,転移課題に用いる内容や調査の実施時期といった調査手法について詳細な検討をすべきであることなどが明らかとなった。

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