2021 年 62 巻 1 号 p. 37-48
平成29年告示の小学校学習指導要領の理科では,約20年振りに第3学年に「音」に関する学習を行うことが規定された。教師が,学習指導を通して子どもの科学概念構築を促すためには,学習前の子どもの素朴概念や生活経験等を把握する必要がある。そのため,本研究では子どもの「音」に関する科学概念構築を促す理科授業をデザインするために,学習前の子どもの「音」に関する認識調査を実施し,教授・学習プロセスマップを用いて,「音」に関する授業をデザインし,授業実践を通して,その有効性を検証した。その結果,(1)多くの子どもは学習以前に「音」と「震え(振動)」を結びつけて考えておらず,「音」は物体の衝突や摩擦により生じると日常経験等から想起している。(2)子どもが音の発生要因と考えた衝突や摩擦の場面において物体の振動を想起させるためには,子どもが「音」と「振動」との関係(命題)を理解し表現する授業デザインが有効であることが明らかとなった。