理科教育学研究
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原著論文
生徒のアナロジーを用いて科学現象を説明する能力の育成に関する研究
―電気回路の単元の授業を通して―
塩嶋 公輔森下 將史片平 克弘
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2022 年 63 巻 1 号 p. 95-106

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抄録

科学現象を他者に分かりやすく伝える技能が重要視されていることを鑑みて,本研究では,先行研究の分析をもとに,科学現象の説明に生徒がアナロジーを用いる上で,どのようなアナロジーの特徴や扱い方を理解しておくべきかを特定した。その結果,(1)アナロジーでは説明できない箇所があるという「アナロジーの限界」,及び,(2)説明する内容の量的な「因果関係の類似性」への言及の重要性を抽出した。その結果を受け,本研究では,抽出したアナロジーの特徴や扱い方を生徒に教授するための授業案を作成し,中学2年生の生徒を対象に授業を行い,生徒のアナロジー利用の変化を調査した。その結果,特筆すべき効果は認められたとは言えないが,アナロジーを用いて科学現象を説明する際に,「アナロジーの限界」について着目する生徒は増加傾向にあった。また,「因果関係の類似性」に関しても,効果についてはクラスによって大きく異なっていたものの,言及する生徒の増加には効果はあった。この2点の成果に加えて,「一対一対応の制約」すなわち,「新たにアナロジーでの説明のために導入した1つの要素が,説明される内容中のある1つの要素と結びつくという制約」を理解させる重要性が明らかとなった。

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© 2022 日本理科教育学会
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