2022 年 63 巻 1 号 p. 127-138
本研究では,高等学校物理の「電気と磁気」単元の電気抵抗に関する素朴概念の抽出を行い,その修正を行うための教材及び指導プログラムを検討し,実践した。最初に,電気抵抗の形状と抵抗値に関する学習前の概念調査から,多くの生徒が「電気抵抗の体積が大きいほど抵抗値も大きくなる」「電気抵抗の長さが長いほど抵抗値は大きくなり,断面積には依存しない」といった素朴概念を持つことが明らかになった。これらの素朴概念を修正し,科学的概念を形成するため,本研究では導電性があり,抵抗率と形状を自由に変えることのできる導電性粘土を製作し,実験に用いた。実験を通して素朴概念と科学的概念の矛盾点を明確化するとともに,実験後のグループ討議を通して素朴概念の獲得要因を明確化し,さらに既有の知識の中で科学的概念の説明方法を考えた。実験群と統制群の事前,事後及び遅延調査の結果から,導電性粘土を用いた指導プログラムにより,電気抵抗に関する素朴概念が修正され,科学的概念が形成されるとともに,形成された科学的概念が保持されることも確認できた。