PCKは,複雑な構造であるが,理科教員養成課程学生の模擬授業の評価に見られる教師の知識領域を分析することにより,教師が分析の際に働かせたPCKについて明らかにすることができる。本研究では,学生の評価を分析する際の差異を顕在化することを通して,教師のPCKを明らかにすることを研究の目的とする。その結果,次の4点が明らかとなった。(1)理科教師と大学教員の両者は,同一の模擬授業における学生の同一の評価の記述であっても,それらの解釈に差異が生じている。(2)理科教師は,異なる模擬授業の評価において,異なる評価の解釈をしている。(3)大学教員は,多くの模擬授業の評価において,ある程度,評価の解釈に一貫性が見られる。(4)模擬授業の評価の解釈の違いは,信念や教師経験の違いによると考えられる。