子どもの多様化,Society5.0とポストコロナ時代の新たな学び,教員不足などを背景に教員の資質・能力が再定義され,教員研修に関する仕組みの構築が求められている(中央教育審議会,2022)。理科教育において,こうした理科教員の資質・能力に関する研究を含む教師教育についての先行研究は多くない。そこで,本研究は,学習指導に関する理科教員の資質・能力を包括的に調査することを目的とした。Naumescu(2008)の提唱する「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」の28項目が東京都で理科を学習指導する教員にとって,理科教員の資質・能力として認識されるかどうかを意識調査から明らかにし,その上で東京都の理科教員の意識と意識を形成する教職経験との関連性の分析を行った。その結果,以下の諸点が明らかとなった。1)Naumescuの提唱する「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」は,調査に回答した東京都で理科を学習指導する教員にとって,理科教員の資質・能力として受け入れられた。2)東京都の理科教員の資質・能力の捉え方においては,第2の軸である「教授・学習プロセスの軸(T-S)」への意識が1つの鍵になっているという特色が明らかになった。3)「授業実践や教育に対する考え方に影響や変化を及ぼすと考えられる事柄」及び「教職経歴」の経験と「優れた実践につながる理科教員の資質・能力」には,一定の関連性があることが明らかになった。