抄録
我々はヒト二足歩行制御機序の実験的解明を目的として,トレッドミル上を歩行するニホンザルの大脳皮質から単一神経細胞活動を記録している.重力場において二足で歩く際に中枢神経系は,体幹の重心と両足趾で構成される支持面との相対的位置関係を巧みに制御することによって動的平衡を保つ.現在までに得られた成績から,大脳皮質の一次運動野がこの体幹姿勢と下肢運動の統合機能の一側面を担うことが明らかとなってきた.主として一次運動野に起始する皮質脊髄路は上肢と同様に下肢も制御する.そしてヒトの皮質脊髄路に備わる精緻な下肢,特に足趾の制御機能が体幹の重心(地球との接点で生じる抗力)を巧妙に制御することを可能とし,体幹荷重の支持という重力の拘束から上肢を開放するのである.