バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
38 巻, 3 号
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解説
  • 平﨑 鋭矢
    2014 年 38 巻 3 号 p. 168
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
  • 木村 賛
    2014 年 38 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    直立二足歩行は地球上でヒトのみが行う特異なロコモーション様式である.この歩行がいつ,どこで,どのように,なぜ獲得されたかを知ることは人類進化過程最大の課題の一つである.ロコモーションという動きを知るためにヒトと類縁であるサルのロコモーションを調べる比較運動学の研究が進み,化石の証拠と相まって二足獲得過程を明らかにしてきた.ヒトはアフリカにおいて700 万年ほど前に二足歩行を行うことでサルと分岐した.二足歩行能力はサル特有の樹上三次元での生活へ適応する中から発達してきた.これにより,ヒトは樹上より地上に降り立った時点から,すでにかなり優れた二足能力を持っていたと考えられる.これらの考え方は化石の証拠と矛盾しない.なぜヒトが二足歩行を始めたかに関してはいまだ不明なところが多い.
  • 中陦 克己
    2014 年 38 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    我々はヒト二足歩行制御機序の実験的解明を目的として,トレッドミル上を歩行するニホンザルの大脳皮質から単一神経細胞活動を記録している.重力場において二足で歩く際に中枢神経系は,体幹の重心と両足趾で構成される支持面との相対的位置関係を巧みに制御することによって動的平衡を保つ.現在までに得られた成績から,大脳皮質の一次運動野がこの体幹姿勢と下肢運動の統合機能の一側面を担うことが明らかとなってきた.主として一次運動野に起始する皮質脊髄路は上肢と同様に下肢も制御する.そしてヒトの皮質脊髄路に備わる精緻な下肢,特に足趾の制御機能が体幹の重心(地球との接点で生じる抗力)を巧妙に制御することを可能とし,体幹荷重の支持という重力の拘束から上肢を開放するのである.
  • 坂巻 哲也
    2014 年 38 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    ヒトにもっとも近縁な現生類人猿は,チンパンジーとボノボである.ヒトの直立二足歩行の進化を考えるとき,近縁な現生種の生態を知ることは,ヒトの二足歩行がはじまった起源と,その後に洗練される過程に働いた選択圧を考えるために重要である.この解説では,チンパンジーに比べ研究が遅れているボノボにおもな焦点を当て,両者の生態とロコモーションについて概観する.両者の社会と食物はよく似ている.二足姿勢はボノボの方がきれいに見えるが,これは幼形保有の副産物だろう.ボノボの湿潤林や水辺の利用,より乾燥した地域のボノボの生態は,今後の研究課題である.野生ボノボで観察される二足姿勢とその文脈についての素描も行った.
  • 久世 濃子
    2014 年 38 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    オランウータンは東南アジアに生息する大型類人猿の一種で,現存する最大の樹上性動物でもある.本稿では、オランウータンのユニークな生態(単独性,少産少子社会,採食行動)を紹介した上で,野生オランウータンのロコモーション(運動様式)に関する既往の研究をレビューし,ロコモーションの多様性や多様性を生み出す要因について議論する.最後にオランウータンを通じて,ヒトの祖先が樹上生活していた時に獲得した,直立二足歩行の前適応を,形態と生態の両面から考える.
  • 荻原 直道
    2014 年 38 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    生得的に四足性である霊長類の二足歩行運動を分析し,そこからヒトの二足歩行運動の力学的特徴を対比的に明らかにすることは,ヒトの直立二足歩行の起源と進化を考える上で多くの重要な示唆を提供する.本稿では,我々が進めてきたニホンザル二足歩行の比較運動学・動力学的分析から明らかになってきた,ニホンザルとヒトの二足歩行メカニズムの違いについて概説する.また,どのような筋骨格系の構造改変がヒトの直立二足歩行の進化に重要であったのかを構成論的に検証するために,ニホンザル筋骨格モデルに基づく二足歩行シミュレーション研究も進めている.本稿ではこれらニホンザル二足歩行研究から,ヒトの直立二足歩行の進化に迫る試みについて紹介する.
  • 長野 明紀
    2014 年 38 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    アウストラロピテクスは人類の祖先であり,東アフリカ及び南アフリカで生息したと考えられている.A.L.288-1 の整理番号を付けられたアウストラロピテクス・アファレンシスの一個体については,化石の保存状態が良いため多くの解剖学的・形態学的データが得られ,この個体を対象として多くの研究がなされてきた.これまでの研究を通して,A.L.288-1 が2足歩行を行っていたという点について見解は一致しているが,一方でその歩行様式については見解が収束していない.論点はA.L.288-1 が現代の人間による直立2 足歩行と同様の歩行動作を行っていたか,あるいは現代のチンパンジーの様に膝関節と股関節を屈曲した歩行動作を行っていたのか,である.筆者らは,A.L.288-1 による2 足歩行動作について,筋骨格系シミュレーションを用いた考察を行ったので,本稿ではその概略を解説させて頂く.モデリングとシミュレーションに際しては多くの先行研究において報告されたデータや知見を整理し活用する必要があったので,そこでのキーポイントについても述べる.シミュレーションにより以下の二つの結果が得られた.(1)現代の人間と同様の直立2 足歩行は,チンパンジーのように膝と腰を屈曲した歩行動作に比べて2 倍程度エネルギー効率が良かった.(2)膝と腰を屈曲した歩行動作は直立2 足歩行に比べて機能的安定度がやや高いという結果が得られたが,その差は僅かであった.A.L.288-1 の歩行においてエネルギー消費と機能的安定度のどちらがどの程度重要であったかは考察が難しいが,この研究の結果からは膝と腰を曲げた歩行様式にそれ程の利点は無い様に考えられた.
研究
  • 仲谷 政剛, 小池 関也
    2014 年 38 巻 3 号 p. 207-217
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,筋の動的な特徴を示す新たな指標として,筋張力の身体慣性力に対する動力学的貢献を動力学的変換率,そして筋張力の張力発揮能に対する比を発揮負担度とそれぞれ定義した.つぎに,これらの指標を用いて,踵接地タイプのランナー12 名による速度3.3 [m/s] の定速走動作における,支持脚筋群の動的な特徴について検討を行った.その結果,1)動力学的変換率では筋群に依らず,身体慣性力の水平前後方向成分に比べて,鉛直方向成分が大きいこと,2)張力発揮負担度では身体の制動に貢献する筋群に対して,短縮性収縮時に比べて,伸張性収縮時にその値が大きいこと,そして3)特に,下腿三頭筋では張力発揮負担度が他の筋群に比べて大きく,その動力学的変換率を筋間で比較すると,水平前後方向では腓腹筋が,鉛直方向ではヒラメ筋がそれぞれ大きいことなどが明らかとなった.
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