抄録
近年,日本のソフトウェア開発において,開発原価を低減するために,中国やインド等でのオフショア開発が多く行われている.そして,情報システムの保守運用や業務プロセス処理も,オフショアで行うことで,TCO削減を図ることが既に始まっている.情報システムの保守運用業務をオフショアに移管し,定着を図る際,オフショア特有の様々な課題,つまり文化,商習慣,言語の違いによる多様性の問題が発生する.その中で一番問題となるのは,運用作業の手順書に書きづらい部分が,熟練者の頭の中だけにあり,他の担当者に引き継げないということである.いわゆる「暗黙知」の存在である.そこで,着目したフレームワークが「SECIモデル」である.「SECIモデル」とは,個人の知識を組織的に共有しより高次の知識を生み出すということを主眼に置いた知識創造活動のことである.本稿では,情報システムの保守運用業務のオフショア化に際して,「SECIモデル」の考え方を適用した改善事例について述べる.