日本原子力学会和文論文誌
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高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)用高燃焼度燃料の成立性評価,(II)
片西 昌司武井 正信中田 哲夫國富 一彦
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2004 年 3 巻 1 号 p. 67-75

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抄録
日本原子力研究所(原研)では,2001年度から,高温ガス炉の熱利用研究の一環として,高温ガス炉を用いた電気出力300MW程度のガスタービン発電システム(Gas Turbine High Temperature Reactor 300: GTHTR300)の設計研究を行っている。これは,原研の高温ガス炉である高温工学試験研究炉(HTTR)における経験を踏まえて,高温ガス炉固有の安全上の特長を十分に活かした高い安全性をもつプラントシステムを構築し,かつ,十分な安全性を確保した上で安全機能の簡素化等をはかり経済性の点でも有利なプラントとすることを目指している。この設計研究の一環として,GTHTR300用燃料の設計とその成立性評価を行った。燃料の成立性評価としては,すでに報告したFP放出に対する障壁としての被覆燃料粒子の成立性評価に加え,燃料棒としての構造健全性について評価・検討した。
GTHTR300の燃料設計に課される主な条件としては,HTTRに比べ出力密度が増加するため燃料から冷却材への効率的な伝熱をはかること,高燃焼度化に耐えられるものとすることおよび経済性を高めるために製作コストを抑えること等がある。これらの条件を満たすために,GTHTR300では,HTTRにおける燃料の開発経験をもとに,さらにそれを高性能化した燃料を使用することとした。すなわち,HTTRでは,円筒形の燃料コンパクトを黒鉛スリーブに収納して燃料棒としているのに対し,GTHTR300では,黒鉛スリーブは使用せず,燃料コンパクトを積み重ねたものを燃料棒とし,ヘリウムガスが直接燃料棒表面に接触して冷却する構造とした。また,GTHTR300における使用条件である高い燃焼度に対応できるものとするため,燃料粒子の被覆層を厚くすることとした。
これまでに,FP放出に対する基本的障壁である被覆燃料粒子の被覆層の健全性について検討し,GTHTR300で予定している運転条件において,炉内滞在期間4年間で最大燃焼度約140GWd/tにおいても有意な破損はなく,被覆燃料粒子の健全性が保たれることを解析評価により確認し,平行して実施した経済性評価の結果と併せてすでに報告した。
GTHTR300用燃料では,被覆燃料粒子を黒鉛とともに焼結した円筒形の燃料コンパクトを積み重ねた燃料棒を炉心に装荷する。この燃料棒について,通常運転中に予想される熱応力や地震による外力等に対して燃料棒としての健全性が保たれることも重要である。そこで,スリーブなしで燃料棒としての形状を保ち,かつ,応力や外力に対し十分な強度を持つようなGTHTR300独自の燃料棒の構造概念を考案し,地震等の荷重,通常運転時の熱膨張や照射変形,冷却材ヘリウムガスの圧力損失等に関して検討を行い,成立性のある燃料棒の具体的な構造を決定した。
本報では,GTHTR300用高燃焼度燃料の成立性に関し,その第II報として,燃料棒の構造検討および構造健全性について検討した結果について報告する。
本研究は,文部科学省から原研への委託により実施している電源特会「核熱利用システム技術開発」のうち「高温発電システム」として実施しているものである。
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© by the Atomic Energy Society of Japan
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