2018 年 53 巻 6 号 p. 219-236
微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が告示されたのは2009年であるが、それ以前の濃度測定結果を見ると、年平均濃度は漸減傾向にある。その理由を解明するため、化学物質輸送モデルに適用したトレーサー法により、2000年から2008年までのわが国のPM2.5の発生源寄与を解析した。発生源寄与評価では、国内人為発生源は種別に6区分、国外人為発生源は領域別に中国、韓国、その他の領域の3区分とし、これに全域の船舶および自然発生源を加えた計11区分を対象とした。現在に比べると限定的なものの、当時の利用可能な観測データをもとにモデルの再現性を検証した。その結果、モデルは妥当な再現性を示し、観測に見られた漸減傾向をおおむね再現した。トレーサー法による推定の結果、全国年平均のPM2.5濃度に対して2000–2001年は国内人為発生源が、転じて2002年以降は国外人為発生源が最大の寄与を示した。国外人為発生源の寄与は増加傾向を示し、そのほとんどは中国の人為発生源の寄与によるものであり、それだけで国内人為発生源の寄与を上回る年もあった。これに対して、自然発生源の寄与が2003年以降小さいこと、そして、国内の自動車の寄与が有意(p<0.001)に低下したことにより、PM2.5濃度が漸減したことが解明された。国内の発電所、産業、民生、農畜産、その他の人為起源発生源の寄与の経年的な変化は不明瞭であった。