大気環境学会誌
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53 巻, 6 号
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あおぞら
研究論文(原著論文)
  • 斎藤 育江, 角田 德子, 大貫 文, 大久保 智子, 五十嵐 剛, 牧 倫郎, 熊野 眞理, 佐藤 弘和, 小西 浩之, 猪又 明子, 守 ...
    2018 年 53 巻 6 号 p. 207-218
    発行日: 2018/11/10
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    都内の自動車排出ガス測定局におけるPM2.5の基準達成率は、2015年は年平均で40%であったが2016年は86%に改善した。硫酸アンモニウムはPM2.5の主な成分の1つであるが、現行のイオン成分測定法では、硫酸アンモニウムを直接定量することは難しい。そこで本研究では、PM2.5中の硫酸アンモニウム分別定量法を確立することを目的とした。方法は、PM2.5中に存在すると考えられる4種のアンモニウム塩、すなわち、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムを石英繊維フィルターに固着させたものを試料として、加熱処理による分別定量法を検討した。その結果、110℃、30分間の加熱処理により、硝酸アンモニウム及び塩化アンモニウムはフィルターから消失した。さらに、150℃、30分間の加熱では、硫酸アンモニウムがNH4の半量を失うことが判明した。以上より、PM2.5を110℃及び150℃で30分間加熱した場合、150℃の加熱によって110℃の加熱時よりも減少したNH4は硫酸アンモニウム由来であり、この濃度を測定することにより、硫酸アンモニウム濃度を把握することが可能と考えられた。開発した方法を用いて、2018年1月及び2月に都内の大気を1週間採取し、PM2.5中の硫酸アンモニウムを測定したところ、1月は1.8 μg/m3、2月は2.5 μg/m3であり、硫酸水素アンモニウムは検出されなかった。

  • 板橋 秀一, 速水 洋
    2018 年 53 巻 6 号 p. 219-236
    発行日: 2018/11/10
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が告示されたのは2009年であるが、それ以前の濃度測定結果を見ると、年平均濃度は漸減傾向にある。その理由を解明するため、化学物質輸送モデルに適用したトレーサー法により、2000年から2008年までのわが国のPM2.5の発生源寄与を解析した。発生源寄与評価では、国内人為発生源は種別に6区分、国外人為発生源は領域別に中国、韓国、その他の領域の3区分とし、これに全域の船舶および自然発生源を加えた計11区分を対象とした。現在に比べると限定的なものの、当時の利用可能な観測データをもとにモデルの再現性を検証した。その結果、モデルは妥当な再現性を示し、観測に見られた漸減傾向をおおむね再現した。トレーサー法による推定の結果、全国年平均のPM2.5濃度に対して2000–2001年は国内人為発生源が、転じて2002年以降は国外人為発生源が最大の寄与を示した。国外人為発生源の寄与は増加傾向を示し、そのほとんどは中国の人為発生源の寄与によるものであり、それだけで国内人為発生源の寄与を上回る年もあった。これに対して、自然発生源の寄与が2003年以降小さいこと、そして、国内の自動車の寄与が有意(p<0.001)に低下したことにより、PM2.5濃度が漸減したことが解明された。国内の発電所、産業、民生、農畜産、その他の人為起源発生源の寄与の経年的な変化は不明瞭であった。

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