胆道において炎症と発癌は極めて深い関係がある.胆管に慢性炎症を来す肝内結石あるいは総胆管結石の肝内胆管癌に対する相対危険率は17.64と報告されている.膵液の胆管内逆流を来し胆管に慢性炎症を惹起して胆管癌発生リスクを高める膵胆管合流異常症における胆管・胆嚢癌の合併頻度は成人例拡張型で20%程度,成人例非拡張型で40%程度とされている.原発性硬化性胆管炎では7%程度に胆管癌を認める.肝吸虫は胆管の慢性炎症と胆管癌発生の原因となる.これら炎症を来している胆管には胆管癌の前駆病変である胆管上皮内腫瘍,胆管内乳頭状腫瘍が認められる.胆管癌ゲノム解析における変異シグネチャー解析からは炎症に関連するAPOBEC経路の関連が示されている.胆管周囲付属腺には胆管上皮再生に寄与する幹細胞が存在し,炎症による胆管上皮再生の亢進と遺伝子変異による癌化の母地となることが示唆されている.炎症と発癌の関係の分子機序を明らかにすることで予後不良な胆管癌の予防,早期診断,効果的な治療法開発が進むことが期待される.