東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P017
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C4頸髄損傷者に対する起立負荷時における頚動脈血流動態
*井戸 尚則江西 一成
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抄録
【目的】臨床検査で用いられる頚動脈エコーは心臓から頭部へと繋ぐ頸部動脈の血管径だけでなく,血流速度や血流動態を観察することが可能である.一方,頚動脈エコーを用いて頸髄損傷四肢麻痺患者(以下,頸損者)の頸部血流動態を調べた報告は少ない.今回,C4頸髄損傷者に対する起立負荷時における頚動脈血流動態を調べる機会を得たので報告する. 【方法】受傷後13ヶ月の58歳男性(C4,FrankelB)を対象に測定を行った.Tilt table(OG技研社製)にて安静背臥位をとり,心拍数,血圧,自覚症状と右側総頚動脈からの血流動態(ALOKA社製頚動脈エコー;prosound-4000SV)を測定した.その後,速やかに60度の起立負荷を行い,1分毎に測定を行った.なお,その時点で当院転院後10ヶ月経過し,この間一貫して,自覚症状に応じた起立負荷を行い,起立維持時間は15~30分であった. 【結果】安静臥位では血圧118/80mmHg,脈拍60,気分不快など自覚症状は認めなかった.起立負荷直後に収縮期血圧20mmHg以上の低下,エコー上逆流現象を示す波形を認めたが気分不良などの自覚症状は出現しなかった.2分後,更に血圧58/46mmHgと低下,脈拍78であり,エコー上の逆流現象波形を認めると同時に問いかけに対する多少の気分不良を訴えたが,継続可能の意思表示があった.その結果,意識消失することなく10分の起立位保持が可能であった. 【考察】起立負荷時,腹腔及び下肢に血液が移動し静脈還流量の減少が起こる.静脈還流量減少は心拍出量減少をきたし血圧低下を招く.この血圧低下は心肺受容器・圧受容器に感知され,延髄の血管運動中枢に伝達される.そして,反射性に迷走神経活動抑制,交感神経活動促進により心拍数が上昇し心拍出量が回復する.また,交感神経を介して容量・抵抗血管が収縮による末梢血管抵抗が上昇し血圧が維持される.これらの速やかな作動によってヒトは円滑に日常生活を送ることができる.しかし,頸損者ではこの経路のうち延髄からの交感神経経路が遮断され,起立性低血圧を起こすことが知られている.
 今回の結果より,頸損者の起立負荷時には,起立直後からの急激な血圧低下を認め,さらに頚動脈血流の逆流現象を確認した.ところが,起立保持そのものは多少の気分不良を訴えたものの,意識消失することなく10分間継続が可能であった.
 意識消失が起きなかったことに関して,転院時は車いす座位でも気分不良を認めたが,現在は殆ど認めないことや従来言われている血圧とは上腕動脈の血圧であり,心臓より上位にある頸動脈,脳血流についての実態は不明のままであり,なんらかの形で脳血流を維持させていると考えられる.したがって,頸損者に対して理学療法を行う上での血圧調節を理解し,起立負荷を実施することの意義を循環動態の点から認識することも重要である.
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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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