抄録
【目的】足部は唯一地面に接地し,身体の状況や外的な環境の変化に適応させながら,体重を支持する役割を果たしている.足部のアーチ構造には,縦アーチと横アーチが存在し,衝撃を緩衝して荷重を分散する役割があり,体重を支持するうえで重要である.また,外反母趾は第1中足骨頭の疼痛を主体とし,2次的に足趾や爪の変形をもたらす.先行研究によると,外反母趾による痛みや変形を訴える患者が年々増加している傾向にあるとの報告がある.また,足部アーチの変形や外反母趾により,さまざまな機能障害,運動障害に発展していくとの報告がされている.このことから,足部アーチと外反母趾との関係性を明らかにすることは,臨床上重要であると考えられる.これまでに我々は,第26回東海北陸理学療法学術大会において,外反母趾角,内側縦アーチ高率,Leg heel angle(以下,LHA)との関係性について検討し,外反母趾角と内側縦アーチ高率,および内側縦アーチ高率とLHAの間に負の相関が認められ,一方,外反母趾角とLHAの間に正の相関を認めたことを報告した.今回も昨年度に続き,足部の機能形態の調査を実施した.本研究の目的は,足部アーチと外反母趾角に着目し,その関係性について明らかにすることである.
【方法】対象は,平成23年4月に金沢市で開催された「第32回健康づくりフェア」に来場された下肢に整形外科的疾患の既往がない成人115名(男性26名,女性89名,年齢65.77±11.70歳)の左右230足とした.対象者には,事前に口頭にて調査研究の趣旨を説明し同意を得た.測定は自然立位とし,足部形態の評価項目として,内側縦アーチ高率,横アーチ長率,外反母趾角を測定した. 内側縦アーチ高率は,大久保らの足アーチ高測定方法に準じて,足長に対する舟状骨高の割合(%)を算出した.横アーチ長率は,足長に対する足幅の割合(%)を算出した.外反母趾角は,第1趾側角度を用い,外郭線の第1中足趾節間関節突出部で母趾の接線と,踵の内側接線のなす角(°)を測定した.測定は全て同一検者が実施した.統計処理は内側縦アーチ高率と外反母趾角,横アーチ長率と外反母趾角,内側縦アーチ高率と横アーチ長率に対してPearsonの相関係数を用いて検討した.有意水準は,5%とした.
【結果】対象者115名の値を平均し比較した結果,内側縦アーチ高率と外反母趾角に負の相関(r=0.23)が認められた.横アーチ長率と外反母趾角に正の相関(r=0.53)が認められた.内側縦アーチ高率と横アーチ長率との間に相関は認められなかった(r=0.15).
【考察】今回の結果から,内側縦アーチ高率と外反母趾角との間には負の相関,横アーチ長率と外反母趾角との間に正の相関があることが認められた.立位における足部への体重負荷は下腿から距腿関節を経て距骨にかかり,そこから踵骨,舟状骨へと荷重が分散し伝達される.先行研究において三秋らによると,内側縦アーチ高率の低い群では,立位において足圧中心位置が内側へ偏移していたと報告している.また,林らは,体重負荷により母趾列の外旋,第4,5趾列の内旋による横アーチの広がりが生じると報告している.そのことから,年齢の増加に伴い,体重負荷による荷重量の増大や,筋・靭帯などの静的支持組織の弱化などにより,生理的な荷重許容能を超える負荷がかかったため,足部における荷重分散の力学的平衡性が崩れ,内側部への荷重負荷が増大し,後足部では踵骨を回内させ,中足部では舟状骨の下降,前足部では第1中足骨の内転,基節骨の外転を引き起こしたと推察される.
【まとめ】今回,足部アーチと外反母趾角との関係性について検討した.足部アーチの低下は外反母趾角度を増大する要因である可能性が示唆された.このことから,足部形態を評価することは,機能障害や動作・運動能力の低下を把握するうえで重要であると考えられる.また,今回の足部形態の評価方法は,簡易的に測定できるため,臨床場面において,十分活用することができる評価方法であること考えられえる.足部アーチは,身体の静的な状況よりも歩行や片脚立位といった動的な場面で,機能を発揮すると思われる.今後は,動的な身体変化が求められる場面における足部形態について,さらに検討を進めていきたいと考える.