論文ID: 23-19NR_OA
本研究では,様々なマイクロピラー構造を有する超撥水性表面を用いて滴下されたfakir 水滴の蒸発による濡れ転移挙動と,凝縮水滴の濡れ転移挙動について実験的に調査した.超撥水性表面のマイクロ構造の耐久性を高めて再現性を確保するために,ダイヤモンドライクカーボンが用いられた.本研究の主な成果として,デピニング力が小さくて滑りやすい超撥水性表面においては,蒸発によって水滴の直径が0. 37 mm 以下となるまでCassie-Baxter 状態からWenzel 状態への濡れ転移が抑制されることを明らかにした.マイクロピラーのピッチとピラー幅を適切に選択することで,三相接触線長さが短くなり,デピニング力は小さくなった.さらに,凝縮した水滴の濡れ転移を防ぐために超撥水性表面の表面構造を改良した.マイクロピラーを囲む壁を追加し,ナノ粒子コーティングによって階層粗さをもたせた.この新しい表面構造では,凝縮水滴が成長し,隣接する水滴と合体して900 µm 以上の大きさになるまでの一連の凝縮過程において,濡れ転移を抑制することを確認した.この表面は滴状凝縮及び着氷防止に対してより優れた性能を示すことが期待される.