日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-13
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優秀研究発表賞応募演題
テレメトリーシステムによるサルおよびイヌにおけるカルシウム拮抗薬の心血管系に対する作用の比較
*重山 智一鳥飼 祐介孫谷 弘明鈴木 晶子肱岡 基樹桑野 康一福崎 好一郎永田 良一鬼頭 剛
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抄録

【背景および目的】カルシウム拮抗薬は高血圧の他にも虚血性心疾患や血管疾患,不整脈などの幅広い病気の治療薬として使用されている.カルシウム拮抗薬の高血圧に対する作用はよく研究されているが,正常血圧に対する作用についてはあまり研究されていない.さらに,実験動物を用いた実験は麻酔下で行われていることが多く,ラットやイヌがよく使用されているが,霊長類を用いた実験はほとんど行われていない.そこで今回,我々はサルとイヌにカルシウム拮抗薬を投与し,テレメトリーシステムを用いて心血管系に及ぼす影響を比較した.【方法】予め送信機を埋め込んだ雄性のカニクイザルとビーグルを用いた.ニカルジピンを単回経口投与(0,3,10mg/kg)し,心血管系のパラメータとして血圧,心拍数,心電図に対する作用を検討した.測定はテレメトリーシステムにより連続的に記録した.【結果および結論】薬物投与前の血圧は,サルで収縮期/拡張期:84.2/52.0 mmHg,イヌで収縮期/拡張期:136.0/80.0 mmHgであった.ニカルジピン投与後(10mg/kg),サルでは全例において収縮期及び拡張期血圧の低下(最大20%)がみられ約8時間後まで持続し,イヌでは収縮期及び拡張期血圧の低下(最大35%)がみられ10時間以上持続した.心拍数に関しては投与前値と比較して全例において上昇した(サル:最大327%,イヌ:最大241%).心電図に関しては,サルおよびイヌともにPR間隔およびQT間隔の短縮がみられたがQTcに影響はなかった.今回の実験でサルとイヌの血圧の値がニカルジピンの投与前で大きく異なっていたにもかかわらず,降圧作用の程度がほぼ同様であったこと、さらに血圧下降に伴う反射性の心拍数の増加の程度ではサルのほうが大きかったことから,心血管系への評価はイヌよりもサルの方が有用であると示唆された.

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© 2005 日本毒性学会
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