日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-33
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優秀研究発表 ポスター
メタボロミクスを用いた薬物性肝線維化マーカーの探索
*齊藤 公亮石川 将己山田 弘中津 則之前川 京子斎藤 嘉朗
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抄録
肝線維化は、ウイルス感染、脂肪肝、薬物投与/接種等によって引き起こされる肝疾患の1つであり、線維化そのものに症状はないものの、門脈圧の亢進や、肝硬変、また肝硬変に引き続く肝がんの原因となることがある。これまでのトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトの成果から、肝障害性薬物のうち、四塩化炭素、アリルアルコール及びロムスチンがラットにおいて薬物性肝線維化を引き起こすことが明らかになっている。そこで本研究では、メタボロミクスを用いて、これらの薬物による肝線維化のバイオマーカーを同定することを目的とした。具体的には、上記プロジェクトにおいて、6週齢Sprague-Dawley系雄性ラットに28日間ロムスチンもしくは溶媒を経口反復投与後、調製した血漿を用いた。同血漿から、メタノールを用いてリン脂質・スフィンゴ脂質・中性脂質を抽出した。リン脂質・スフィンゴ脂質及び中性脂質の測定は超高性能液体クロマトグラフによる分離後、電場型フーリエ変換質量分析計(Q-Exactive)を用いた。薬物投与群とコントロール群間で解析を行い、バイオマーカー候補を同定した。ロムスチンを投与したラットの血漿では、多くの脂質分子に増加傾向が認められた。その中でも特に、糖セラミドの増加が顕著であった。このことから、脂質分子全般、特に糖セラミドが肝線維化のバイオマーカーとなりうることが示唆された。今後は四塩化炭素及びアリルアルコールによる肝線維化バイオマーカーの探索、またロムスチンを含めた共通の肝繊維化マーカーの探索、さらには肝障害性薬物のうち肝線維化を引き起こさなかった薬物(アセチルアミノフルオレン、ニトロソジエチルアミン及びエタンブトール)と比較することにより、薬物性肝線維化に特異的なマーカーの探索を予定している。
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© 2015 日本毒性学会
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