日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-3
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シンポジウム19 In vitroin vivoの接点から探るエピジェネティック毒性
胎生期HDAC阻害剤曝露による遅発性学習記憶障害とその発症機序
*中島 欽一
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抄録
神経幹細胞及びそれから分化・産生されるニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトは、脳神経系を形成する主要な細胞種である。近年、DNAメチル化やアセチル化を含むヒストン修飾)などによるエピジェネティクス機構が、これら細胞の機能発現に重要であることが明らかにされつつある。我々は以前に、抗てんかん薬かつヒストンアセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるバルプロ酸が、神経幹細胞からニューロンへの分化を促進できることを示した。またこの作用を利用して、神経幹細胞移植とバルプロ酸投与の併用により、新しくニューロンを補充することで、損傷脊髄の機能を改善させる新規治療法の報告も行った。しかし我々は最近、マウス胎仔がバルプロ酸に曝露されると、神経幹細胞からニューロンへの分化が過度に促進された結果、本来ならば維持されているべき神経幹細胞数が減少し、成体海馬におけるニューロン新生が減少することを見出した。その結果、バルプロ酸曝露マウスでは、成長後に学習記憶障害が観察されるが、この障害を離乳後の自発的運動によって一部改善できることを見出した。本講演ではこれら一連のトピックスについて紹介するとともに議論したい。
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© 2015 日本毒性学会
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