日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-261
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PLD阻害によるアポトーシスへのERストレスの関与
*中川 博史硲 一樹小森 雅之西村 和彦
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抄録
【目的】Phospholipase D (PLD)の阻害が細胞にアポトーシスを導くことが報告されているものの、その機序の詳細は不明なままである。我々はこれまでPLD活性のタンパク細胞内小胞輸送への関与を見出しており、特に粗面小胞体(ER)からGolgi装置間の輸送への関与に着目している。本研究ではPLD活性の抑制によるER膜上での輸送小胞形成過程への影響を調べ、ER腔内へのタンパク蓄積の可能性について検討を行い、ERストレスが誘導されているかについて調べた。【方法】ラット正常腎由来株化細胞NRK細胞を用いた。PLD活性の抑制には、PLD1阻害薬CAY10593、PLD2阻害薬VU0364739、またはsiRNAによるノックダウンを用いた。小胞輸送への影響については、Brefeldin Aにより断片化しERと癒合したGolgi断片がER-Golgi間小胞輸送により輸送されGolgi装置が回復する過程を観察することにより評価した。ER膜上での輸送小胞構成過程への影響については、ER膜と細胞質からなる再構成系を用い、細胞質からER膜への輸送小胞構成コンポーネントの移動を計測することにより評価した。【結果と考察】PLD1阻害剤、PLD2阻害剤、およびPLD1またはPLD2のノックダウンにより、ER-Golgi間小胞輸送は抑制された。PLD1またはPLD2のノックダウンは、ERストレスマーカーGRP78の発現上昇を導いた。輸送小胞構成コンポーネントのSar1、Sec23/24、およびSec13/31のER膜上での構築に対して、PLD2阻害剤は全てに影響を示さなかったが、PLD1阻害剤はSec13/31の構築段階を抑制した。よって、PLD活性の抑制は、rER-Golgi間小胞輸送を抑制し、ERストレスを誘導することがわかった。特にPLD1活性の抑制は、ER膜上での輸送小胞の形成を阻害し、ER腔内へのタンパク蓄積を導き、ERストレス由来アポトーシスを惹起すると考えられることから、PLD活性阻害によるアポトーシス誘導機序の一つとして、ERストレス由来アポトーシスが関与していることが示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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