アミドアミンはヘアリンスや衣料用柔軟剤などに使用される陽イオン界面活性剤である。なかでも、アルキル鎖長C18のアミドアミンは、物化性状や環境排出量の情報が乏しく、環境モニタリングデータもないことから化審法優先評価化学物質に指定され、精度の高いリスク評価が課題となっている。そこで、環境排出量の推定値や弊社の環境モニタリングデータを駆使し、消費者製品に配合されるアルキル鎖長C16、C18およびC22のアミドアミンについてヒト健康と環境影響に対する詳細なリスク評価を行った。
アミドアミンの香粧品用途(ヘアリンス)のヒト暴露量は0.0016 mg/kg/day、家庭品用途(衣料用柔軟剤使用による経皮暴露に環境経由の暴露を考慮)のヒト暴露量は0.0027 mg/kg/dayと推定された。毒性の質や強度にアルキル鎖長の影響は認められず、香粧品用途および家庭品用途でのヒト暴露量はいずれも導出無毒性量(DNEL;香粧品:0.083 mg/kg/day、家庭品:0.042 mg/kg/day)以下の暴露と推定された。
環境排出量は、化審法登録情報、香粧品の市場規模と販売実績、及び弊社の使用量を考慮して推定した。また、環境中に排出されたアミドアミンはlogKowの値から河川表層水のみならず河川底質にも分布すると考えられたため、水生生物に加えて底生生物の予測無影響濃度を推定した。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)を用いて推定した全国河川の予測環境中濃度(PEC;河川水:0.021 µg/L、河川底質;0.096 mg/kg-dry)は、独自に実施した環境モニタリングと同程度であり、水生生物と底生生物の毒性値から算出した予測無影響濃度(PNEC;河川水:0.64 µg/L、河川底質:1.30 mg/kg-dry)以下であった。
したがって、消費者製品に配合されるアミドアミンは現在の使用状況において、ヒト健康と環境に対して有害影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。