日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-176
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ジンクマルトールの雄ラットにおける4週間反復投与毒性試験
*人見 将也秋澤 文香藤原 咲春土岸 広治近藤 聡志山下 八洋木本 浩貴諸木 孝泰井上 裕基
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抄録

【目的】亜鉛は生体にとって必須な微量元素であり,亜鉛不足により味覚障害等の影響が生じる。この対処法として,亜鉛錯体による亜鉛補給が利用されている。また,亜鉛錯体は亜鉛補給だけでなく,抗酸化作用及び肝臓保護作用などの薬理学的作用も有することが報告されている。一方で,亜鉛は過剰摂取により膵毒性等が生じることが知られており,亜鉛錯体による過剰な亜鉛補給により,毒性が生じる可能性が考えられる。しかし,亜鉛錯体の毒性情報は殆どなく,詳細は不明である。そこで本研究では,代表的な亜鉛錯体であるジンクマルトール(ZM)を雄ラットに4週間反復経口投与し,毒性評価を行った。【方法】雄性SDラットにZMを0,200,600及び1000 mg/kg/dayの用量(各群5例)で4週間反復経口投与し,全身毒性を評価した。【結果・考察】1000 mg/kg/dayにおいて,膵炎様の病理所見(腺房細胞萎縮,間質の線維化,単核細胞の浸潤,単細胞壊死),白血球パラメータの増加(白血球数,好中球,リンパ球)及びクレアチンキナーゼの増加が認められた。さらに,赤血球パラメータの減少(赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリット,平均赤血球容積,平均赤血球ヘモグロビン)が認められ,貧血への適応反応と考えられる脾臓の髄外造血の病理所見及び網状赤血球の増加傾向が認められた。また,血漿中鉄及び銅濃度が減少した。以上より,ZMの4週間反復経口投与により,1000 mg/kg/dayの用量で膵炎及び貧血が認められ,雄ラットにおけるZMの無毒性量(NOAEL)は600mg/kg/dayと考えられた。

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© 2022 日本毒性学会
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