日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-177
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液体状漢方製剤「補全-S」の犬における安全性と有効性の検討
*篠原 祐太Mohamed ELBADAWY山中 恵山本 晴佐藤 よもぎAmira ABUGOMAA臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

十全大補湯は、人医療分野において、疲労や食欲不振等の際に使用される漢方薬の一種である。我々はこれまでの研究で、顆粒状の十全大補湯が、犬においてビンクリスチン誘発性の消化管運動低下を減少させることを明らかにした。しかし、一般的な漢方薬は、その独特な味や香りと顆粒状の剤型によって、動物での投与が困難である場合が多い。そこで我々は、甘い液体状の十全大補湯製剤である補全-Sに注目した。しかし、補全-Sの犬での安全性や効果について検討した研究はこれまでにない。本研究では、補全-S長期投与による犬での安全性と胃運動性への影響について検討した。通常用量(0.8 ml/kg)あるいは高用量(4.0 ml/kg)の補全-Sを犬に42日間投与し、一般状態(元気さ、食欲、嘔吐下痢の有無、体重)の確認と血液検査(血球計算および生化学)を行い、安全性を評価した。胃運動性は、通常用量の補全-Sを42日間投与し、超音波検査装置により胃の動きを観察してMotility Index (MI)を算出して評価した。さらに、通常用量あるいは高用量の補全-Sを投与して血中グレリン濃度の変化も測定した。通常用量あるいは高用量の補全-Sを投与すると、有意な体重の増加は認められたが、それ以外の一般状態に変化は認められなかった。血液検査では、有意な変化があった項目が複数認められたが、殆ど全ての測定値が基準値内であったことから、これらの変化に臨床的な意義はないと考えられた。また、補全-SはMIを有意に上昇させ、高用量投与の場合に血中グレリン濃度を有意に増加させたため、補全-Sは犬でグレリン濃度を増加させて胃運動性を上昇させた可能性が示唆された。以上のことから、補全-Sは獣医療分野において、安全で投与しやすい漢方薬として、体重減少を伴う抗がん剤治療時の消化管運動低下などの場合で使用できる可能性が考えられた。

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