日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-2
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シンポジウム7
rasH2-Tgマウスの特徴と標準化された品質管理・安定供給システム
*鈴木 雅実
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抄録

rasH2-Tgマウスは、がん原性リスク評価への活用を目的に公益財団法人・実験動物中央研究所(実中研)で開発され、標準化された品質管理・安定供給システムにより世界中に供給されている。rasH2-Tgマウスは、rasH2ホモ遺伝子型が致死性のため、ヘテロ遺伝子型マウス(tg/wt)として維持している。がん原性試験には、幅広い発がん感受性を持たせた近交系同士(C57BL/6J-TgrasH2とBALB/cByJ)のF1ハイブリッドを供している。rasH2-Tgマウス生産のために、3系統のマウス凍結胚(C57BL/6J-TgrasH2、C57BL/6J、およびBALB/cByJ)が実中研に保存されている。3系統の凍結胚は、日本クレアとTaconic Biosciencesに送付され、両施設で個体復元を行い、その後、生産コロニーへと拡大し、F1ハイブリッドのrasH2-Tg(tg/wt)ならびにrasH2-Wt(wt/wt)を得ている。rasH2-TgとrasH2-Wtの選別は各個体のジェノタイピングによって行われる。生産コロニーは、遺伝的浮動(genetic drift)を防ぐために、10世代を上限とし、約5年ごとに凍結胚からの個体復元により更新される。rasH2-Tgマウスの表現型と均一性を維持するために、両施設のコロニー更新に合わせ、陽性対照化合物N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)を用いた短期発がん性試験の標準プロトコルに基づく感受性モニタリングを実中研で実施している。また、約1年毎にMNU誘発腫瘍が好発する前胃を対象としたモニタリングも実施している。このように、最適に設計された品質管理・安定供給システムにより、発がん性の再現性と安定性を備えたrasH2マウスが世界中に供給されている。

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