2017 年 19 巻 4 号 p. 013-024
タクシーは公共交通機関として運賃が規制されており,他の運輸事業とともに2000年前後に需給調整規制の撤廃と運賃設定の自由化が実施された.タクシー運賃への規制は,他の運輸事業のそれに類似しているが,地域独占性を持つ鉄道などとは異なる側面を持つ.この問題意識に基づき,本稿では,総括原価主義に基づくタクシー運賃規制の仕組みを概観し,行政の裁量の下での運賃規制の運用を整理する.さらに,東京において2017年1月に導入された初乗り距離短縮による近距離運賃の引下げの含意を検討する.結論として,消費者の選択が機能しない流し中心の地域では,総括原価主義に基づく運賃規制を是とし,運賃規制を含むタクシー政策を分権化する必要性を提示した.