リスクコミュニケーションは,送り手と受け手との相互作用的な情報や意見の交換過程である.本研究では,鉄道において,安全の重要性と本質を再整理したうえで,今日,ホームの安全対策,遅延問題,地域鉄道における安全対策等に関して,事業者と利用者との間でのリスクコミュニケーションの必要性が高まっていることを明らかにする.そして,リスクコミュニケーションを推進するための方策として,利用者に関する意識改革,コミュニケーションシステムの改善を提言する.
タクシーは公共交通機関として運賃が規制されており,他の運輸事業とともに2000年前後に需給調整規制の撤廃と運賃設定の自由化が実施された.タクシー運賃への規制は,他の運輸事業のそれに類似しているが,地域独占性を持つ鉄道などとは異なる側面を持つ.この問題意識に基づき,本稿では,総括原価主義に基づくタクシー運賃規制の仕組みを概観し,行政の裁量の下での運賃規制の運用を整理する.さらに,東京において2017年1月に導入された初乗り距離短縮による近距離運賃の引下げの含意を検討する.結論として,消費者の選択が機能しない流し中心の地域では,総括原価主義に基づく運賃規制を是とし,運賃規制を含むタクシー政策を分権化する必要性を提示した.
北米=東南・南アジア間の大陸間横断フライトにおいて,太平洋周りの場合,成田空港,仁川空港,桃園空港,香港空港の4空港が主たるトランジット空港となっている.本研究では,北東アジアのトランジット空港選択の実態を,データベースの解析から明らかにした.桃園空港はタンソンニャット空港をODとするルートでトランジット旅客数を伸ばし,成田空港からは主に仁川空港にトランジット旅客がシフトしていることがわかった.また,成田空港のトランジット旅客を対象にAHP(階層化分析法)を用いて,乗継ルート選択において重視する要因の重要度を明らかにした.その結果,業務目的は「航空会社」を最も重視している一方,観光・VFR目的は利用する「フライト」を最も重視する結果を得た.「空港」はどの旅行目的でも相対的に高いウェイトではなかったものの2割前後であり,重要な要因として認識されていることがわかった.