2021 年 23 巻 p. 72
いうまでもなく鉄道は,限られた空間でも,非常に大量の乗客を安全かつ正確,迅速に輸送できる点で,他の追随を許さない交通手段である.そのため多くの都市で都市鉄道が圏域における基幹的交通機関として大きな役割を果たしてきている.しかしながら,とくに開発途上国では,その都市鉄道が整備されてなかったり,鉄道があっても昔ながらの運行スタイルだったりと,鉄道の持つ力を都市交通問題解決に活かせていない事態が続いていた.都市鉄道を導入,活用しようとしても,その整備・維持・拡充に必要な知識やノウハウが蓄積されていないばかりかその経験さえほとんどない状況であった.これに応えるものとして,国土交通省の「インドネシア,フィリピン及びタイにおける都市鉄道建設及び改良のための共同調査委員会」(委員長:森地茂東京大学大学院教授(当時の肩書)でまとめられた事業化マニュアルをベースとして, KISS-RAIL:Keys to Implement Successfully Sustainable Urban Railwaysが2005年に英語で出版された.