抄録
頸部椎間板ヘルニアの後遺症による四肢不全麻痺および運動機能障害によって、手根関節の可動域の減少を伴った犬に対するリハビリテーションの効果について報告する。事例は去勢済みのヨークシャー・テリアの11歳で、左前肢の手根関節が伸展せずにナックリングを呈していた。左手根部の関節可動域の改善を重点的に行い、併せて自力歩行のために後肢の筋力の改善、四肢のバランス感覚の向上を目標とした。リハビリテーションは週に1回、計41回実施した。その結果、ストレッチと装具固定により前肢の可動域が広がり、付随して神経学的検査でも改善が見られた。水中トレッドミルと屈伸運動で後肢の筋力がつき、起立維持と三本足起立によってバランス感覚が得られ、自力起立および自力歩行が可能になった。本事例では、特に飼い主と同伴でのリハビリテーションを行うことで、緊密な意思の疎通を図ることができたことも効果を高めたものと考えられた。