1976 年 13 巻 2 号 p. 94-98
通常の市場に供給すべく生産された肉豚の中から品種や飼育履歴の明らかなもの159頭を選び, ほぼ同時期に同一条件下でと殺し, その胸最長筋について, 色調, 保水性, テクスチャーなど, 肉特有の性質をあらわす理化学的性質を調べた。
その結果, UCS表色法による色値, 加圧ろ紙法, あるいは加熱遠沈法による保水性, 加熱遠沈法による結着性およびテクスチュロメーターによる硬さ, 凝集性, ガム性, 咀しやく性のうち, 色値中のa成分を除いては, いずれも多くの報告の中で一般的に見出されるとほぼ同様の値が得られた。標準偏差や変異係数の大きさから判断して, これらの結果は一般的な豚肉の性質を示す標準値として十分採用し得るものであると思われた。
それぞれの性質について, 品種間の差異を統計的に検討した。その結果, 調査したほとんどの性質において品種間に相違の認められることがわかった。ただし, それぞれの性質における品種間の優劣は, その性質毎に異なっており, 大量観察的にはそれぞれの品種毎に肉質上特性が見出されることが明らかになったに過ぎなかった。