動物遺伝育種研究
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50 巻, 1 号
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巻頭言
  • 2022 年 50 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    日本動物遺伝育種学会は、分子遺伝学から統計遺伝学まで、遺伝学から育種学まで、研究者から実務者、この分野で活躍が期待される学生までを網羅し、相互の研究交流と協力ならびにその成果の普及を図ることを目的に2000 年に創設され、それから22 年を迎えます。本学会誌「動物遺伝育種研究(The Journal of Animal Genetics)」は、それまで動物遺伝研究会が発行してきた「動物遺伝研 究会誌(Journal of Animal Genetics)」の巻号を継承し、第28 巻から始まり本年 で通巻第50 巻を迎えます。これまでの50 巻を振り返ると、その時代とともに 動物遺伝育種分野の研究対象及び内容の変遷とその技術革新の急速な発展を再 認識することができます。第50 巻発刊を機に是非ともこれまでの研究の流れを 本学会誌バックナンバーで振り返っていただきたいと思います。一方で、本学 会誌の厚さが年々薄くなってきていること、逆に印刷製本費および発送費が学 会年間予算に占める割合が高くなってきていることなど学会活動に関わる重要 項目に問題が見えてきています。発刊50 巻を迎える学会誌に関わる状況を学会 活動の活性化を基盤にして会員の皆さんとともに振り返って考えていきたいと 思います。  2020 年、2021 年度ともに新型コロナ感染症の影響で対面による学会大会を開 催することができず、Face to face の研究発表および情報交換がこの2年間でき ませんでした。学会創設当初の目的である「相互の研究交流と協力ならびにそ の成果の普及」が目に見えては十分にできなくなってきているように感じます。 一方で、この2年間、2020 年は神戸大学万年英之先生を、2021 年は帯広畜産大 学口田圭吾先生を大会長として学会大会をインターネットを介したオンライン 開催で実施してきました。さらに「畜産におけるゲノム育種の現状と課題」をテー マに動物遺伝育種シンポジウムも4年ぶりに開催することができました。Face to face による開催はできませんでしたが、オンラインによるコミュニケーション の効果は十分得られ、学会大会開催地まで時間とコストをかけて参加する必要 はなく、ラボからあるいは自宅から学会大会参加とその気軽さと便利さを実感 しながら研究交流および情報交換することができました。とくに大学生、大学 院生を中心とした若手の研究発表に多くの皆さんがエントリーしてくれ、オン ラインならでは意見交換ができたものと実感できました。学会大会を企画、実 施、運営をいただきました万年大会長と神戸大学の皆様、口田大会長と帯広畜 産大学の皆様に誌上からではございますが感謝を申し上げます。あわせて優秀 発表賞を受賞された皆様、おめでとうございました。2022 年度は、鹿児島大学・ 後藤貴文先生を大会長として鹿児島大学の皆様のご協力の下、開催いたします。 コロナ禍で今後の状況を予測することはたいへん難しい状況ではありますが、 学会大会の目的に沿って最善の方法で開催いたします。多くの会員の皆様にご 2 参加いただき、研究交流と情報交換を行っていただきたいと思います。  2021 年7月には第38 回国際動物遺伝学会(ISAG)がVirtual 学会として開催 されました。遡ること17 年前の2004 年に第29 回ISAG 東京大会を日本動物遺 伝育種学会が実施実行委員を担い、明治大学を会場に開催し、多くの会員が参 加し、世界の研究者と研究情報交換ができました。そのころに比べると会員の ISAG 参加者が減少し、昨年の第38 回ISAG はオンライン開催ながら日本から は限られた人数の参加になってしまっていました。同様に毎年1月にアメリカ・ SanDiego で開催されているPAG(Plant and Animal Genome)学会の参加者も年々 減ってきています。これらは日本における動物遺伝育種分野の研究者数が減っ てきたからなのでしょうか、あるいはこの分野のアクティビティが下がってき たことに起因するのでしょうか。学会への参加も含み、日本動物遺伝育種学会 会員皆様の活発な研究活動への更なる取り組み、若手研究者の育成へと積極的 なご賛同を期待しています。  最後になりますが、学会の活動や取り組みについて必要な改革や研究の流れ への対応、若手研究者の育成など主体的かつ速やかに実行していきたいと考え ています。若手会員の皆様も遠慮なくご意見ご提案を学会事務局までお寄せく ださい。一緒に学会および研究分野を盛り上げていきましょう。本学会誌は会 員の皆様の研究成果公表の場として、原著論文、総説、ミニレビュー、解説な ど積極的に掲載し、読み物としても興味が持てるものとし、また、会員参加型 の学会誌になるよう、本学会が引き継いだ第28 巻からの精神を引き継いでさら に充実を図りたいと考えています。そのためには会員の皆様からの積極的な投 稿は欠かせません。本学会は一人一人の研究への情熱で支えられている学会で あり、このことは学会創設当時から引き継がれ、動物遺伝育種研究の発展は会 員の皆様の日々の努力に支えられています。引き続きご理解とご協力を賜りま すよう、よろしくお願い申し上げます。活発な研究活動により動物遺伝育種分 野が発展し、広く社会に貢献できることを願いながら、通巻第50 巻の巻頭の言 とします。
原著論文
  • 造田 葵, 小川 伸一郎, 松田 洋和, 谷口 幸雄, 渡邊 敏夫, 杉本 喜憲, 祝前 博明
    2022 年 50 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    This study attempted to infer the population structure of Japanese Black cattle by using genotype data on 33,063 genomewide single nucleotide polymorphism (SNP) markers of totally 4,348 fattened steers slaughtered at carcass markets in Tokyo, Osaka, Hyogo, Tottori, and Hiroshima prefectures. We evaluated allele frequency, heterozygosity, linkage disequilibrium, correlation of linkage phase, and genotype concordance among the steers. The distribution of allele frequencies in the steers sampled in Hyogo differed from the others, showing >10% of the SNPs as monomorphic. Observed heterozygosity was lowest and degree of linkage disequilibrium was highest in Hyogo. Genotypes were more similar among Hyogo steers than between other steer pairs. These results show the genetic characteristics of the Japanese Black cattle populations inferred from genotype data on genome-wide SNPs obtained using a commercial chip.
  • スレイ モン, モー ルウィン, エエ モ, 河邊 弘太郎, 和田 康彦, 岡本 新, 下桐 猛
    2022 年 50 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、ミャンマー在来鶏の肉用鶏4集団と闘鶏用2集団との表現型の特徴づけを行うために実施した。合計 114 羽の成鶏(雄52 羽、雌62 羽)の7種類の体尺測定形質を測定した。得られた測定値は、分散分析(ANOVA)、 相互の相関係数の分析を行った。ANOVA の結果、すべての体尺測定形質において、性と個体群の要因が高度に有意 であった(p < 0.05)。性別では雄が雌よりも大きかった。6つの品種・集団の中では、ヤンゴン地域の在来種鶏が最 も体格が大きかったが、すねの長さは最も短かった。異なる地域で採取された2種類の闘鶏集団の間には、いくつ かの形質で有意差が得られた。すべての身体測定形質間の相関係数は0.24 から0.80 の範囲で有意であった(p < 0.01)。 体重と他の形質との相関が最も高かったのは、体高とつま先から背中までの長さであった。本研究で得られた知見は、 ミャンマー在来鶏に対する理解を深めることに貢献できる。しかしながら、今後、これらの集団を同じ管理下に置き、 結果を再評価する必要があると考えられる。
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