家族研究年報
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38 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
シンポジウム報告
  • ― 東日本大震災を考える ―
    永井 暁子, 千田 有紀
    2013 年 38 巻 p. 1-4
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
  • 鹿目 久美
    2013 年 38 巻 p. 5-13
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        結婚後、自然豊かな福島で家族とともに暮らしていた生活は、東日本大震災後の原発事故であっけなく失われた。事故後の放射能による娘の健康不安から、私は神奈川へと母子避難を決意した。被害にあったこと、避難することで、家族のつながり、友人とのつながり、地域とのつながりを失いかけていた避難先の生活で、福島の子どもを招く保養キャンプの活動に参加するようになった。自分たちのためにも福島の子どもたちのためにも、この活動を続けていきたいと考えている。
  • ― 広域避難を中心に ―
    田並 尚恵
    2013 年 38 巻 p. 15-28
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        日本では1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、多くの自然災害が発生している。 だが、これらの自然災害のうち、被災者が全国的に避難したケースはそれほど多くはなく、阪神・淡路大震災と三宅島噴火災害(2000年)、そして東日本大震災(2011年)の3例だけである。災害研究では、個人の生活再建には「医(心身の健康)、職(仕事)、習(子どもの教育)、住(住まい)」の支援が重要であるとされる。東日本大震災の広域避難者の多くは原子力災害による避難者であると指摘されており、地域によっては将来的に戻る時期が見通せない地域もあるため、避難先での支援と継続的な支援がより必要となると考える。
  • 竹村 祥子
    2013 年 38 巻 p. 29-37
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        本稿は、2012年7月に開催されたシンポジウム『災害と家族』において行われた鹿目久美氏と田並尚恵氏の報告に対するコメントと、その後8か月たった2013年3月に考える「東日本大震災が家族にもたらす影響」について記すものである。
        本稿前半部では、鹿目久美氏と田並尚恵氏の報告から得られた知見を確認する。後半部では今後家族が震災から復興し、「日常生活」を取り戻していくために今日検討しておきたい「世帯分離」の意味について考える。今後の家族生活の再建にどのような道を示唆できるのか、そのためにはどのような研究が必要なのかについて試論を記す。
投稿論文
  • ― マルクス主義フェミニズム理論の脱構築 ―
    大貫 挙学
    2013 年 38 巻 p. 39-56
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        「言語論的転回」以降のフェミニズム理論において、性別カテゴリーやセクシュアル・アイデンティティは、言説による構築物とみなされるようになっている。J. バトラーによれば、主体は、言語行為によってパフォーマティヴに構築されるものである。 しかし、こうした理論的傾向に対しては、「文化的」次元のみが過度に強調され、「物質的」不平等の問題が軽視されているとの批判がある。一方、性差別の物質的側面を重視してきたのが、マルクス主義フェミニズムであった。とはいえ、マルクス主義フェミニズムにおいては、性的主体化の言説的機制が適切に理論化されていない。
        そこで本稿では、主体の言説的構築を前提とする立場から、マルクス主義フェミニズム理論の再検討を行いたい。とくに、社会の内部/外部の非決定性が、物質/文化の相互還元不可能性を示していることを主張する。
  • ― 家族構造との関連で ―
    工藤 豪
    2013 年 38 巻 p. 57-73
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        本稿は、隠居制家族が現代日本の家族構造を理解するにあたって重要な意義をもつという立場から、これまでの研究が隠居制家族をどう捉えてきたのかを整理するとともに、隠居制家族を「同質論」・「異質論」という議論の枠組みの中にどのように位置づけるべきなのかについて考察を試みたものである。
        社会学、民俗学、社会人類学において展開されてきた研究を踏まえて、清水と上野による整理を土台としながら新たな視点を加えて考察を行ったところ、家族構造・社会構造および隠居制家族と東北日本型・西南日本型に関する六つの考え方が存在することが明らかになった。以上の結果、隠居制家族の位置づけにおいて、家族構造についての捉え方が同質論か異質論か、隠居制家族について重点をおく部分は相続か生活単位か、そして「西南日本型」に関する理解と用い方、この三点が重要な指標になってくるのではないかとの結論に達した。
  • ― 明治・大正期における知識人の言説から ―
    阪井 裕一郎
    2013 年 38 巻 p. 75-90
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        明治期から現在まで日本社会を描く際に、たびたび「家族主義」という言葉が使用されてきた。本稿の目的は、この言葉が登場した明冶から大正期における知識人の言説の分析を通じて、その意味を探究することである。最初に、明治期における家族主義を称揚する言説を分析し、この時期の家族主義が封建批判や救済事業とともに語られていた事実を確認し、その意味と目的を明らかにする(第2 節)。続いて、社会主義者や民主主義者といったいわゆる「革新」の側から提唱された、「家族主義」や「家庭」の言説を検討する。そこから家族主義批判が内包していたある種の逆説を明らかにする(第3節)。続いて、近年の政治哲学の議論を参照しつつ、社会統合の基盤としての「情念」に着目することで、家族主義と民主主義の関係を理論的に問い返す(第4節)。家族主義と民主主義を対立的に捉える従来の見方では看過されてしまう問題を明らかにし、そのうえで家族主義を克服する新たなつながりの可能性を展望する(第5節)。
  • ― 社会的養護に関する議論を手がかりに ―
    藤間 公太
    2013 年 38 巻 p. 91-107
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        本稿では、社会的養護施設をめぐる2つの論争―ホスピタリズム論争、津崎哲夫vs 施設養護支持派論争―を分析し、「家庭」を支配的なロジックたらしめる言説構造について考察する。分析からは、かつてはあった「家庭」への批判的視角が徐々に失われ、反施設論者だけでなく、施設養護支持派も「家庭」をケアの場の支配的モデルと前提するようになったことが明らかになった。こうしたなか、個別性や一貫性の保障という小規模ケアのメリットを「家庭的」な形態に結び付ける言説構造が維持、強化されてきたと考えられる。以上を踏まえ、考察部では、「家庭」を理想的なケア環境として措定する言説構造が持つ問題と、今後の脱家族化論の課題について議論を行う。
  • ― 相互行為における公私区分とその交渉 ―
    戸江 哲理
    2013 年 38 巻 p. 109-128
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        本稿では、子育てひろばにおける利用者(母親)とスタッフのごはんをめぐる発言とやりとりを、会話分析の立場から検討する。分析の焦点は、これらの人々自身がごはん(作り)を公私区分上に位置づける様子を解明することにある。母親は子育てひろばを立ち去る間際に、ごはんについて発言することがある。この発言はひとり言として発されるか、自分の会話能力がない子どもに宛てられる。このことから、母親がごはん(作り)のことを家族のメンバー内(私的領域)に留めるべきだと捉えていることが窺える。他の人たちはこの発言に対して反応することがあり、それによってごはん(作り)は家族以外のこの場にいる人たちが関与する領域(公的領域)へと移動する。反応にもいくつかのバリエーションがあり、それぞれ公共化のレベルが違う。そして、この反応のバリエーションは、ごはんの作り手としての立場に対する反応する人の注意の払いかたによって生み出される。
  • ― 戸田貞三と川島武宜の家族論にみる情緒と権威の関連性 ―
    本多 真隆
    2013 年 38 巻 p. 129-146
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2017/02/14
    ジャーナル フリー
        本稿は、日本の家族研究における、M・ヴェーバーの「ピエテート(Pietät)」概念の受容のあり方を、戸田貞三と川島武宜の著作を中心に検討する。M・ヴェーバーの「ピエテート」概念は現在、「家」制度における権威服従関係を支える意識として理解されている。戸田と川島はそれぞれ、家族研究における「ピエテート」概念の受容の先駆者であった。検討の結果、戸田と川島は「ピエテート」概念を、戦前の「家(家族制度)」の権威服従関係と情緒的関係の関連を論じるために用いていたこと、そしてその関係は、「近代家族」の情緒的関係とは性質を異にすることが明らかになった。結論部では、「日本型近代家族」を「家」と「近代家族」の二重構造と捉えて分析する場合は、情緒概念が歴史的変遷を含め、多義的であることを認識することが必要であることを示した。
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