観光消費は空間的自己相関モデルを用いて分析されることが多い。ところが、交通ネットワーク投資が行われると空間重み行列が変化することが考えられる。本研究では、交通ネットワーク投資の評価に用いられてきた周遊型観光消費モデルと空間的自己相関モデルの関係を明らかにし、交通ネットワーク投資による空間重み行列の変化を把握する方法を提案した。この方法を用いてリニア中央新幹線の名古屋開業による空間重み行列の変化を求め、外国人観光消費の空間的波及の変化、入国空港毎の観光消費の変化を分析した。分析の結果、東京都での観光消費は沿線地域の観光消費にあまり大きな影響を与えないのに対して、大阪府での観光消費は東京都の観光消費に大きな影響を与えるようになることが明らかにされる。
近年、日本の都市公園で、居心地のよい賑わいのある空間等を目指して、従前の公園から大きくリニューアルされる取組が増えているが、これら取組は地域のアメニティを高め、都市に影響を与える可能性がある。一方、公園の大規模リニューアルには多額な費用を要するため、効果の検証が欠かせないが、既存研究はあまり見当たらない。このため本稿では、南池袋公園の大規模リニューアルが周辺の地価に与える影響について、JR池袋駅の東西の公園を対象としてDIDで検証した。同公園のリニューアルにより、400 m以内の地価に7–10%のプラスの効果があり、固定資産税等の潜在的な税収増加が整備費等を上回る可能性が高いことが分かった。
本研究の目的は、企業同士が同じ営業時間の長さを選択する戦略的補完関係の成立が、営業時間を拡大し合う均衡あるいは縮小し合う均衡を生じるか否かについて、同ブランド店舗間および他ブランド店舗間の立地競争の影響を踏まえながら明らかにすることである。そこで本研究では、九州のファミリーレストランのパネルデータを用いたプロビット分析により、品質と価格および空間構造を考慮しつつ、立地競争と営業時間選択についての実証分析を行う。分析の結果、各店舗は商圏内の同ブランド店舗が24時間営業を行う割合が大きい(小さい)ほど24時間営業を行う(行わない)傾向、すなわち同ブランド店舗間で営業時間の戦略的補完関係があると分かった。また商圏内に他ブランド店舗が多いほど24時間営業を行う傾向から、他ブランド店舗間の立地競争は営業時間を拡大させることが分かった。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら