Colloid & Interface Communications
Online ISSN : 2758-5379
48 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
  • 懸橋 理枝
    2023 年 48 巻 4 号 p. 1-2
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    昨年度、部会の新たな委員会としてDEIR(Diversity, Equity, Inclusion and Respect)委員会が発足し、その委員長を拝命して以降、様々な場面で、部会におけるDEIR委員会の意義などを述べさせていただいています。DEIR委員会のミッションの一つは、ジェンダーの問題はもちろんですが、外国籍の部会員などにも部会員としてのメリットを十分享受してもらえるよう、部会に変化や改善を提案することです。そのため、他の委員会に比べて若手の女性委員の比率が高く、外国籍の研究者が複数参加しているのもDEIR委員会の特徴と言えます。また、他学会でダイバーシティや男女共同参画の委員会で活躍されている委員や、海外企業でダイバーシティに関するトレーニングを受けた経験がある委員にも参加していただき、様々な課題に対して積極的な意見交換を行っています。

    ここでは、DEIR委員会の名称に含まれている4つのワード、即ち“diversity”、“equity”、“inclusion”、“respect”のうちの、“equity”について述べたいと思います。というのも、最近、この言葉が実は最も理解するのが難しい(理解が足りない)と感じる場面がいくつかあったためです。“equity”とよく似た言葉に“equality”があります。equalityは「平等」、“equity”は「公平性」と訳されることが多いように思いますが、両者の違いを示すのに、次のようなイラストがしばしば用いられます。左側の“equality”では、全員に同じ高さの台が準備されており、「与えられる条件はみな同じで平等」です。しかし、これだと一番右の子供は野球を見ることができません。一方、右側の“equity”では、それぞれの背の高さ(状況)に合わせた台が準備されていて、全員が野球を見ることができます。つまり、「個々の特性や状況を考慮し、誰にでも公平な機会を提供する」のが“equity”と考えられます。

    当部会において、この“equity”を考慮した例の一つとして、直近では、科学奨励賞および技術奨励賞のライフイベントによる年齢制限緩和があります。これは、DEIR委員会から部会へ提案したものです。DEIR委員会で緩和措置の内容について検討を重ね、賞選考委員会とも議論して部会への提案を経て決定したものが、部会ウェブサイトで公開されています。以下に、その内容を紹介します。

    1)年齢制限を緩和するにあたり、休業等(休暇、休職、離職を含む)の期間は自主申告で、煩雑な書類の提出は求めない。ただし、選考委員会が証憑を求める場合がある。

    2)出産・育児、介護などのライフイベントによる休業等(休暇、休職、離職を含む)に伴う研究活動の中断期間がある場合

     2-1)産前・産後の休暇を取得した場合、あるいは合計3か月以上の育児休業を取得した場合は、性別を問わず1回の出産につき、応募年齢の上限を2年まで緩和する。

     2-2)介護休業を取得した場合は、その通算期間分、年齢制限の緩和を認める。

     2-3)病気や災害など、やむを得ない事情で研究期間の中断がある場合は、中断期間と理由を明記する。

    3)緩和の上限は5年とする。

    例えば、出産・育児により、研究に集中するのが難しい時期が一定期間(年単位で)続くのはご存知の通りで、どんなに手厚い家族や周囲のサポートがあったとしても、出産・育児がなかった場合と同じにはなりません。介護や災害などによる研究の中断も、ご本人の努力だけではいかんともしがたい場合が多く、誰にでも起こり得ることでもあります。

    DEIR委員会では、個々の状況を考慮し、奨励賞に応募するための「公平な機会を提供」するべく、今回の年齢制限緩和を提案しました。今年度は、ライフイベントに伴う年齢制限の緩和が主となりましたが、外国籍の部会員が奨励賞の応募に際して不利にならないような緩和措置も検討するべきとのご指摘もいただいており、私自身も確かにその通りであると考えます。部会員誰もが公平な機会を享受できる環境を整備するため、来年度以降も検討を続けたいと考えています。また、奨励賞以外でも改善するべき点についてお気づきのことがありましたら、是非DEIR委員会にお知らせください。よりよい部会にしていくため、部会員の皆様のご理解とご協力を、どうぞよろしくお願い致します。

特集
  • 桑折 道済, 野々村 美宗, 豊田 成人, 宮島 亜佐美, 井上 亮, 川端 庸平
    2023 年 48 巻 4 号 p. 3-18
    発行日: 2023/12/10
    公開日: 2023/12/10
    ジャーナル オープンアクセス

    C&I48-2の特集では、学生会員を対象として「本誌で読んでみたい記事・企画」のアンケートを実施した。その結果、「コロイド・界面化学分野が企業・技術・製品にどう活かされているか」知りたいという意見をいただいた。そこで本特集では、コロイド界面化学が世の中にどのように活かされているのか、その中でも我々が常日頃使っている「五感(視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚)」に関連する取り組みを紹介したい。企業とのつながりが強い本部会において、コロイド界面化学の知見が日常生活に活かされていることをなんとなく感じているかもしれない。

    しかしながら、具体的にどういったサイエンスによって実現しているかと問われると、明確には説明できないように思われる。本特集では5名の先生方に、「◯覚とコロイド界面科学」というテーマで特集記事を寄稿いただいた。◯の部分には、視・聴・味・触・嗅が入り、それぞれを5名の先生に担当いただいた。本特集を通じて、五感に響く「コロイド界面科学」の世界を味わってもらえれば嬉しく思う。

     

    〔1〕視覚とコロイド界面科学

     千葉大学 大学院工学研究院 桑折 道済

    印象派の画家クロード・モネは、同じ風景を、時間帯や季節を変えて何枚も描いた。当たる光の違いにより、1枚として同じ絵はない。色は、物体にぶつかって反射、あるいは透過した光が眼に入った際に、光の情報をもとに脳が作り出す感覚である。視覚と色は密接に関わっている。本稿では、コロイド界面科学的な手法で作製して、はじめてヒトが認識することができる色に焦点をあてて、最近の研究事例を紹介する。

     

    〔2〕ヒトが感じる触覚と界面化学

     山形大学 学術研究院 野々村 美宗

    ヒトはモノに触れた時、さまざまな触感を感じ取る。われわれは、柔らかい皮膚の表面でさまざまな摩擦現象が起こることがこの多彩さと繊細さの一因なのではないかと考えた。本稿では、フォースプレートで皮膚表面に加わる力学的刺激を見積もるとともに、指モデル接触子が正弦運動で摺動する触覚センシングシステムを用いてモデリングし、しっとり・さらさら感や保湿した皮膚の触感を解析した成果を紹介する。

     

    〔3〕肌特徴の可聴化によるインタラクションシステム

     株式会社資生堂 みらい開発研究所 豊田 成人

    肌の画像から特徴を抽出して、聴覚情報である音楽に変換するインタラクションシステムを開発した。本システムはマイクロスコープによって肌の拡大画像を取得し、画像解析によって特徴量を取得する。その特徴量を用いて音楽データを制御することで、その肌の状態にあった楽曲を生成することができる。本システムを展示会にてデモンストレーションした結果、肌の評価をより実感してもらうことができた。

     

    〔4〕衣料用柔軟剤におけるカプセル化香料の分散安定化技術

     ライオン株式会社 研究開発本部 宮島 亜佐美・井上 亮

    近年、ドラッグストア等で見かける衣料用柔軟剤には、柔軟効果のみならず香りの持続や消臭機能を訴求したものが多くなっている。これらの機能発現にはカプセル化香料が活用されているが、製剤化においては分散安定化が課題となる。そこでレオロジー特性評価に基づき種々検討した結果、カプセル化香料の分散安定性および良好な使用性を両立する基材を見出した。ここでは、検討した基材のうち特定のデキストリン誘導体に着目し、衣料用柔軟剤における分散安定化のメカニズムに関して、レオロジー特性および溶存状態の両面から解析した結果について紹介する[1]

     

    〔5〕コロイド分散系としての食品とトライボロジー

     酪農学園大学 川端 庸平

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