CIEC春季カンファレンス論文集
Online ISSN : 2759-5196
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最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 徳竹 圭太郎, 坂部 和音, 佐久間 大
    2024 年 15 巻 p. 9-14
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学校及び高等学校において,第二言語学習者がスピーキングに対する不安を感じること無く,日常的に第二言語を使用したスピーキング練習が出来るシステムを開発した。開発したシステムの特徴は,生成AIによる対話が実現されていること,学習者の習得段階に応じたレベル設定を行ったこと,音声による対話機能が実装されていることの3点である。本研究で開発したシステムの有用性について検討するため,学校現場において試験的に導入し,生徒12名を対象としたアンケート調査を実施した。その結果,本研究で開発したシステムは,対人とのスピーキング練習と比べて不安を感じにくく,日常的に使用しやすいものであることが明らかになった。

  • 寺門 芽衣, 菅谷 克行
    2024 年 15 巻 p. 15-21
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     近年,機械翻訳の性能が向上し,さまざまな場面で活用されている。言語習得学習における活用も検討がなされており,例えば機械翻訳の利用が英語学習に対してポジティブな影響を与えること等の報告がある。また国内における日本語学習者数は増加傾向にあり,出身国・地域や母語・使用言語も多様である。そのため,多言語に対応した日本語学習教材や教育環境の提供・必要性が高まっている。そこで本研究では,機械翻訳の利用が日本語学習にどのような影響を与えるのかを実践を通じた調査により明らかにし,日本語学習における機械翻訳の有効的な活用方法を検討・提案することを目的とした。作文・読解・聞き取りの各課題による実践調査の結果,それぞれの技能において機械翻訳を利用することにメリットがあることが示唆された。その結果から,文章を書く際には機械翻訳を利用して日本語の文章の確認や添削を行うことで正しい表現や単語等を知ることができること,機械翻訳を使えば記事や小説などの多くのコンテンツを教材として利用できるようになること,機械翻訳の音声出力機能を利用することで,発音を確認して読むだけでなく耳で聞いてより自然な発音を知ることができることを,日本語学習におけるAI機械翻訳の有効な活用方法として提案した。

  • 鈴木 あこ, 柿沼 千尋, 菅谷 克行
    2024 年 15 巻 p. 22-27
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     認定特定非営利活動法人カタリバは,コロナ禍にオンライン教育サービスである「オンライン放課後プログラム(旧カタリバオンライン)」を開始し,休校措置に見舞われた2020年から現在に至るまで,子どもたちの創造性ある学びを目指した活動を行ってきた。著者はこのプログラムの中で,伴走スタッフとして安心できる居場所づくりを目指して子どもたちのサポートを実施してきた。本論文ではその内容と実践の結果を報告する。具体的には,振り返りミーティングデータの発言内容についてカテゴリー分けし,その発言回数や割合等の推移に基づき,スタッフであるキャスト同士のコミュニケーションを分析した。文面で記録されたデータのうち,2021年7月から2022年12月までの期間を対象に分析した結果,月ごとの合計発言数は時間が経過するにつれて減少し,キャストの人数も同様に減少していることがわかった。それに伴い,議題を立てて話し合いをしながら子どもやプログラムへの向き合い方を深めるコミュニケーションが減少したことが明らかになった。一方で,互いを称賛するコミュニケーションは,時期を問わず一定量の発言があった。

  • 多田 義男, 辰己 丈夫, 益川 弘如
    2024 年 15 巻 p. 28-34
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     文部科学省が2023年7月に公表した「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(以下,ガイドライン)[1] では,小中高で生成 AI を活用する際には,情報の真偽を確かめること(ファクトチェック)の習慣付けを含め,情報活用能力を育む教育活動を充実させ,AI 時代に必要な資質・能力の向上を図ることが必要であると述べている。学校での使い方については,「限定的な利用から始めること」としているが,生成AIは,新たな発想や創造性を刺激することや,従来には考えつかなかったようなアイデアを生みだすことが期待できる。また,生成AIを活用することで,情報活用能力を高めることや,情報の真偽を確かめる力の育成もできるのではないかと考えた。そこで本稿では,生成AIの活用について,3年生の授業において,生徒に生成AIの使用を選択させ,提出された課題の内容を分析・整理し,生成AIの活用状況をまとめた。その結果,生成AIを使用して提出されたレポートには言葉に偏りがあることが発見され,クロス集計により生徒の満足度が高いレポートは,複数回生成させたり,指示文をよく考え使用することで生徒自身,満足度の高いレポートになることがわかった。

  • 齋藤 舞桜, 徳竹 圭太郎, 佐久間 大
    2024 年 15 巻 p. 35-40
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,プログラミング学習において生成AIを活用して自力解決を目指す学習者に着目し,①生成AIからのフィードバックを要求するプロンプトの分類を作成して,②プログラミング学習での教育的実践に適用し,学習者と生成AIとのやり取りを評価することを目的とする。これを達成するために,高校2年生が生成AIに要求したプロンプトを対象に,大谷(2022)(1)のSCAT(Steps for Coding and Theorization)を適用し,プロンプトの分類を行い,大分類3つと中分類6つと小分類8つに分けることが出来た。次に,本研究で作成した分類を習得的なプログラミング学習と探究的なプログラミング学習にそれぞれ適用し,その実践を評価した。前者に適用した所,教師が設定した学習課題そのものの良し悪しを検討することや,生徒の到達度評価に転用できることの可能性を明らかに出来た。また後者に適用した所,学習者の課題の進捗状況を評価できる可能性が明らかとなった。今後の課題としてより多くの学習者が参加する実践に対して,本研究で作成した分類を適用する必要がある。

  • 小野 真嗣, 曽我 聡起, 菊地 真人, 田邉 鉄
    2024 年 15 巻 p. 41-46
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,ユーザビリティエンジニアリングの観点から教育工学的手法によって,効果や効率および満足度の高い言語学習や指導を提供するサービスを提案する目的で,語彙情報の表示システムの開発について述べる。コーパス言語学をはじめとする計量的な言語分析を行う研究分野では,1960年代以降多くの定量的な語彙表が作成された。一方,コンピュータ科学の分野ではWordNetと呼ばれる電子的な概念辞書データベースも開発された。しかしながら,学習目的への応用という側面では,これらのコンテンツは十分に連携を取りながら活かされているとは言えない。本研究では,頻度,難易度,関係性の観点から,これら言語学・情報学それぞれの分野で産出された既存の語彙データを再活用し,語彙学習に向けた学習者向けの学習サービスの提案を試みた。具体的には,語彙間の関係性をWordNetに収録された類語辞典的なデータではなく,上位語・下位語の階層情報に注目し,それらの可視化によって,語集団としてのグループ生成のシステムを開発した。本稿は,そのシステム実装に関して報告する。

  • ‐D情報の技術分野に関する抽出‐
    𠮷田 拓也
    2024 年 15 巻 p. 47-50
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     中学校学習指導要領解説技術・家庭科編や高等学校学習指導要領解説情報編では,中学校技術科「D情報の技術」と高等学校共通教科情報科「情報Ⅰ」との系統性の重視や縦の連携について記載がある。お互いの立場としては,中学校「D情報の技術」では,どのようなことを学んでいたり,高等学校「情報Ⅰ」ではどのようなことを学んだりするのかを把握しておくことが必要だと考えた。そこで,本稿では,教材の主軸となる教科書を取り上げて,まず,中学校技術科「D情報の技術」の記載から,索引を利用して用語を抽出し,さらに本文中や脚注からも抜き出し,それらをまとめた上で,教科書発行者3社のうち,複数社で出現した用語を選び出した。加えて,それらを「情報Ⅰ」の4分野に再分類した。そして,最終的に残った用語(99語)を示して,その学習内容を考察した結果,中学校「D情報の技術」での学習によって,「情報Ⅰ」の4分野にわたって基礎的な知識を学んでいることがわかった。

  • 臼井 昭子, 登本 洋子, 長瀬 達也, 渡邉 洋輔, 古川 英光
    2024 年 15 巻 p. 51-55
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     3Dプリンタの教育的な活用が進められている。3Dプリンタの材料は幅広く硬軟様々な印刷物が可能であるものの,学校教育において材料に着目した研究事例はほとんど見られない。材料が重要な要素となる美術科の立体表現において基礎的な資料を得るため,本研究では次の3点を行った。(1)3Dプリンタでやわらかい材料を用いて立体作品を制作しその作品に対する専門家からの評価を得た,(2)美術科の学習指導要領解説における材料に関する記述を整理した,(3)(1)と(2)を踏まえ,3Dプリンタという表現方法とその材料から想定される学習活動や指導事項などについて考察した。その結果,専門家からは,やわらかい材料から生まれた質感の新鮮さが一定の評価を得るとともに新たな造形の可能性が指摘された。学習指導要領解説には,材料の特性を生かし新しいことに挑戦して表現することなどが述べられており,3Dプリンタは,材料の特性を生かしたり新しい表現手法に挑戦したりする点で,児童・生徒らの表現力等の育成を支援する可能性があることなどが示唆された。

  • 佐久間 大, 金高 右京, 徳竹 圭太郎
    2024 年 15 巻 p. 56-61
    発行日: 2024/03/09
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,著者らが開発した問題項目構造化法Tag-ISM法(Tag-Interpretive Structural Modeling)を複数の問題集に適用し,(Ⅰ)問題項目が体系的,構造的に収録されているか,(Ⅱ)収録されている問題項目の複雑さはどの程度かの2点について比較・分析した。具体的には,4つの異なる問題集に学習要素タグを割り当てた上でTag-ISM法を適用し,問題項目数,学習要素タグの数,構造化係数などの指標を用いてそれぞれの問題集の特徴について比較・分析した。分析の結果,問題集SUICAは問題集BUDOUよりも領域固有の文脈で体系的・構造的に問題項目を収録している問題集であると特徴づけることが出来た。また問題集NASHIと問題集RINGOの間で「データ分析」の分野・領域の問題項目群が再検討されており,それに伴って関連する他の分野・領域も一部変更されていることを明らかにすることが出来た。

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