本稿は、2018 年度大阪音楽大学研究助成公演「鳥居知行ピアノリサイタル」の研究成果に
ついての報告である。具体的には、技術的、解釈的側面に焦点を当ててピアノ演奏について
論じる。
第一に、音楽的な演奏を実現する為の合理的なピアノ奏法について考察する。ピアノの奏
法に関しては実に様々な考え方があるが、目指す頂点は皆同じであり、それは音楽的な表現
力のある演奏である。今回のリサイタルの準備をはじめ、長年の研究と指導を通して至った
奏法に関する筆者の一見解を紹介する。
第二に、楽曲分析と演奏との関連性について考察する。言うまでもなく、演奏の準備に際
して楽曲を分析することは極めて重要なことである。しかしながら、分析しただけではそれ
を実際の演奏に生かすことはできない。本稿において、分析を演奏に活かす為の具体的な方
法を、ベートーヴェンの第 3 番ソナタの第 1 楽章を例に挙げて提示する。
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